第1章 出会い
その少女と初めて相まみえた時の事を、デスラーは鮮烈に覚えている。
 あれは、対ボラーとの戦役が最も攻防を極めていた時だった。
 ガルマンガミラスに寄港したヤマトとの再会を果たし、同盟国首脳陣を招いての歓迎祝賀会も滞りなく済んだ夜半。
 ただ一人自室に戻ったデスラーのもとに、古代からの通信が入った。
「デスラー。実は今夜、是非とも君に会ってほしい人物がいる。公の場ではどうしても切り出せなかったのだが」
 モニターごしの古代は、先ほどの宴の時とはうって変わったように、緊張した面持ちだった。訝し気に眉根を寄せるデスラーに向かって、
「このような夜半に申し訳ないとは思ったが、艦まで御足労願えないだろうか。できれば・・・」
 言いにくそうに口ごもる。
「供回りはつけずに、単身で、か?」
「そうしてもらえると非常にありがたい」
 デスラーは苦笑した。
「わかった。すぐに行く」


 ヤマトの艦内は静まりかえっていた。無機質な作動音だけが響いている。
「ここだ」
 古代が立ち止まったのは、医務室の前だった。
 音もなくドアが開く。
 一番奥まった寝台の上に、夥しい医療機器のチューブにつながれた人物が横たわっていた。
 その前に立った瞬間、デスラーは息をのんだ。
 思わず背後の古代をふりかえる。
「古代、この少女は・・・?」
 しかし、答えを求めるまでもなかった。、眼前の少女が一体誰の血を受け継いでいるのか、ということは、瞬時にしてわかった。
 その瞳はかたくとざされていたが、寝具の上にゆるやかに広がる金の髪と、ぬけるような白い面は、かつて彼が、命を賭して守ろうとした女性と生き写しであったのだ。
「しかし、まさか・・・このようなことが」
 デスラーの声は驚愕のあまりかすれ、しかし彼は眼前の少女から目を離すことができなかった。
「女王スターシアの末娘、やはり同じ名を受け継いでいる。」
 背後から古代の声が響く。
「彼女の姉サーシャは、暗黒星団帝国との戦いの折に亡くなった。・・・まだ16歳の若さで」
 それ以上は言葉を続けることができず、おし黙る。
「では、この少女が、今となってはスターシアの残した最後の忘れ形見ということか・・・」
「そうだ」
 デスラーは、魅入られたように少女を見つめ続けてやまなかった。
  


 
りょうちゃん
2001年08月10日(金) 21時52分08秒 公開
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簡潔な文体・文章できちんとした物語を伝える力に脱帽。そして、構成力に感動。ストーリーも入りやすいし、これから読む気にさせます。さらっとしていていい感じです。 長田亀吉 ■2001年08月10日(金) 23時45分39秒
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