第2章 蒼の命

 少女は昏々と眠り続けていた。
「深手を負っているのか」
「先のガルマンガミラス東部方面軍との接触戦の折に負傷した。その後、ずっと出血が止まらない」
「何だと?」
「スターシアの血液型はRHマイナスのAB型の筈なのだが、輸血をしようとすると、体内で凝固作用がおきてしまうのだ」
「では・・・体組成が地球人のものではない、と?」
 古代は悲痛に顔をゆがめた。
「ヤマトの医療設備では、これ以上手の施し用がない」
 その言葉を聞いた瞬間に、デスラーの心は決まった。 
「古代。しばらく彼女を我が帝国に預けてはくれまいか」
「デスラー?」
「ガミラスとイスカンダルはもともとが双児星。スターシアがもし、母方の血をより強く受け継いでいるのならば、その生理も地球人よりは我々に酷似している筈。我がガルマンガミラスの医学をもってすれば、回復させることは十分に可能だ」
「だが・・・」
 古代は唇をかんだ。
 デスラーは、確かに胸襟を分かつ戦友であり、この状況下においては、彼の言葉が最も適切であると理解できる。深手を負ったスターシアが、この先の厳しい航海に耐えられようはずもない。
 だが、それでもなお、今だ戦乱のただ中にあるこの地に、ただ一人の姪を置いてゆくことは、彼としては何とも忍びがたいものがあった。
「古代、私を信じてほしい。」
 しかしデスラーの言葉には、いささかの躊躇もなかった。
「必ずや彼女を回復させてみせる」
 そこまできて、ようやく古代は顔をあげた。
「わかった。デスラー。どうかよろしく頼む」

 その夜の内に、スターシアは密かに、帝都のパレス内に搬送された。
 
りょうちゃん
2001年08月10日(金) 23時08分22秒 公開
■この作品の著作権はりょうちゃんさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。

この作品の感想をお寄せください。
サーシャの妹スターシャがヤマトにというシチュエーション。そして、スピード感のある場面展開。飽きませんね。面白いです。 長田亀吉 ■2001年08月10日(金) 23時47分13秒
お名前(必須) E-Mail(任意)
メッセージ
戻る
[ 感想記事削除 ]
PASSWORD