第86話「作戦」
 航路探査を終えた古代とブラックタイガーの数名は、今日も食堂で遅い昼食を摂っていた。
「なあ、俺は新しい作戦を考えたぞ!!」
とテンションの高い古代が得意そうに言った。その顔を見て、コーヒーを飲んでいた加藤と山本達は苦い顔をした。(別にコーヒーが特別不味かった訳ではない。雪がいれたものではなく、ちゃんとエスプレッソマシンでおとしたものである。)なんだか、嫌な予感がしたのだった。
「新しい作戦?」
 山本は気が進まなかったが一応聞いてみた。加藤達の視線が痛い。『聞くなよー、バカヤロー!』無言のうちに彼等の目はそう言っていた。
「そう、それはクロスファイヤー作戦だっ!!」喜色満面で、古代は説明を始めた。
 加藤は小さくため息を漏らした。(聞かなくでも分かるゼ。でも、そんなことしてナンカ意味あんの?)彼が何気なく視線を転じると、妙に穏やかな笑みを浮べて真田が近づいてくるところだった。

「よお、ご苦労さん。」
 大人びた落ち着いた声だ。それに何より知的だぜ・・と加藤は思う。
「丁度いい。今日は皆に新しい作戦を言っておこう。大勢の敵を相手にした時に有効なものだ。」
 急に真田の目が怪しくらんらんと輝き出し、皆は身を乗り出した。
「名付けて’ローレライの魔女作戦’!!こんなこともあろうかと、昔ドイツで録音しておいた魔女の歌声を古代機がスピーカーで大音量で流す。勿論、味方機は耳栓をしておく。そして相手がフラフラしだしたら、ブラックタイガー隊で撃つ!」
「な、なんて素晴らしい作戦なんだ、真田さん!!」
 古代は真田と手を握り合った。
 たまらず、加藤は口を挟んだ。
「ちょっと待って下さい。音は宇宙空間を伝わらないのでは??」
 真田ははっとして目を上げた。
「な、何ということだ!俺としたことがそんなことに気付かなかったとは!は、はっはっはっは!!」
 古代も明るく笑った。
「全くですね、はっはっはっは!!」

 イスカンダルはまだまだ遠い。(おわり)(ごめんなさい)
2001年07月20日(金) 20時04分36秒 公開
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■作者からのメッセージ
文庫より。笑いのツボを真田から古代にシフトした珍しい作品。人によってアプローチが違うのでこういうコーナーは楽しいですよね(コメントBY長田)

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