第542話「食糧事情」
 とんとん…「艦長、起きてらっしゃいますか!艦長!!」
 ヤマト艦長室前で、今日もひとりの剃りこみ男が叫んでいた。
 ヤマト艦長沖田は、仕方なく、ベッドから起き上がり、リモコンでテレビを消した。「技師長め、わしがエッチなビデオをみとるときにノックしやがって」と、沖田は苦々しく思いつつ、衣服を整え、「どうぞ」といった。実は最近、松本キャラをモチーフにしたコスプレエッチのAVが発売され、沖田もちゃんとチェックしていたのである。徳川機関長に貸し出したガンダ○のセーラさん編はまだ返ってこない。沖田は、「くそう、俺も見たいのに」と機関長を心の中でなじっていたところであった。
 真田技師長は、相変わらずハイテンションで部屋に入りこんできた。「真田工場長、入ります!」無用にきびきびしている。また、変なくすりを発明してハイになっているのだろう。
「どうしたのかね、真田君…」
 沖田は、聞いてやる。すると、真田は目をらんらんと輝かせていうのだった。
「艦長、森生活班長に伺ったのですが、相次ぐ戦闘のさなかで、乗組員はなかなか食事をとる時間もないといいます」
「それで?」
「そこで、『こんなこともあろうと』一刻も早くこの状況を打開すべく、開発したのが、こいつです!」 
 真田は、23世紀なのに、青焼きの丸めた図面を艦長室のテーブルに広げるのだった。ぷーんと青焼きの匂いがした。沖田は、この匂いをかぐのはアステロイドシップ計画以来何度目だろう、と述懐した。そして、「これは?」と聞いた。
 真田は、ドアの奥から、ベルトコンベア−みたいな機械を室内に持ち込んできた。
 目を閉じながら、自信ありげに答える。
「全自動麺類供給装置、です。艦内の不要元素を再構築して、麺類をつくり、それを隊員に供給します。自動で麺が供給されるため、効率良く食事をとることが出来ます」
「ほう」
 沖田は、ちらと機械を一瞥する。
 真田は「では、試してみましょう」
 真田は、沖田にお碗と箸を渡して、スイッチを入れた。
 すっと差し出したお碗にトイを伝って、麺が次々に流れ込んでくる。
 沖田はそれを急いで食べて、また、碗を差し出す。
 そこにまた、流れ込んでくる麺。
 
 沖田と真田は結構楽しんだ…。

 やがて、沖田はつぶやいた。
 「とめてくれたまえ、真田君」

 真田は「えい、毎度」
 と蕎麦屋職人になりきったままスイッチを切った。

 沖田「真田君、これは…流し素麺ではないのかね?」
 真田は「はっ!!私としたことが!!どうして、もっと早く気付かなかったんだ!!」と、相変わらず、ハイテンションで頭を抱えて叫びながら、艦長室を去っていくのだった。
 取り残された「全自動麺類供給装置」を沖田はじっとみつめた。そして、再びスイッチを入れた。
 際限なく麺はやってくる。
 お碗ではなく、口でそれを受けてみた。
 ずっとやってみたかったことだった。
 (おわり)
長田亀吉
2001年07月20日(金) 20時13分57秒 公開
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■作者からのメッセージ
うーん、苦しい。でも、真田の「毎度」はちょっとヒットかも(笑)

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