9913回 喧嘩する客 |
のれんをかき分けて入り口の戸を開け店内へ入ってくる島 大介。 島「(笑顔)…こんばんは。おやじさん」 カウンターの向こう側の山崎が笑顔を返す。 山崎「まいど。おっ。ちょうどよかった。(後ろを向いて陳列棚からボトルを取り出して島へ見せる)…いいものが,はいったよ。七色星団から取り寄せた酒だ」 カウンターへ座る島。 島「よく手に入りましたね」 カウンターの上にボトルを置く山崎。 山崎「珍しいだろう? 色々な色が混じりあってるぞ。レインボー・ダンスっていうんだ。飲むか?」 島「いりません」 山崎「冥王星産のクラゲの佃煮もあるぞ」 島「遠慮しときます。ここんとこ,ゲテモノばかりで普通の地球の食べ物が恋しいんですよ。高原ビールと,桜海老ください。」 山崎「(ため息)…まったく。ここんとこ大介,本当に守りに入っちゃってんなあ。古代なんか,美味い美味いと食べたあげくに,クラゲの電気に当たっちゃって通りすがりの客に感電させまくって,結局イナズマンに変身して飛んでったぞ。あいつ,サナギマンだったんだな。知らなかった。(作業にかかる)」 横を見る島。 見ると初老の男性と,性格がきつそうな女性が二つ隣のカウンター席で何やら言い合っている。 サーベラー「…あんな女のどこがいいのよ!」 ズォーダー「だから違うと言っているだろう。法と秩序を取り戻せ。落ち着いて話せ。バカ言ってんじゃないよ」 サーベラー「私が何も知らないとでも思っているのね! ウソつき!」 ズォーダー「よく言うよ。血の一滴までお前のことを思っているんだぞ」 サーベラー「だったら,これはなに? (数枚の写真をカウンターに叩きつける)これでもシラを切るつもり!?」 ズォーダー「(色を失う)…! こ,これは…!」 サーベラー「あなたの行動をミルに監視させたのよ! あんなテレザートの田舎娘のどこがいいのよ! 動かぬ証拠よ! あんな反物質女と火遊びなんて許せない! 遊ばれているのが分からないなんてかわいそうだわ! ヤケドして捨てられるだけよ!」 ズォーダー「女だな。サーベラー。お前,反物質人相手にヤケドですむと思ってんのか!? 絶対に,ふっとんじゃうだぞ!」 サーベラー「とにかく,あなたはウソつきよ! 信じられないわ!」 ズォーダー「ああ! そうさ! どうせおれは全能なるウソつきの絶対者だよ!」 島「まあ。まあ。まあ。まあ。(両手を広げて間に入る)」 真ん中には島。両側にはズォーダーとサーベラー。ふたりそろって島を見る。 サーベラー「…なによ。あんた…?」 必要以上に笑顔をつくる島。 島「(必要以上の笑顔)…ご婦人。この人はウソつきなんですね?」 サーベラー「だったら,どうしたって言うのよ!」 島「だったら,この人はウソつきじゃないですよ」 サーベラー「あ?」 島「(笑顔)…だって,この人さっき自分のことを”ウソつき”って言ってましたから」 サーベラー「なに言ってんのよ!」 島「だって,ウソつきが自分のことをウソつきだって言ったってことは,この人はウソつきじゃないってことでしょ? ということは,この人は正直者だということで,その正直者が自分のことをウソつきだと言ってるんだから,やっぱりこの人はウソつきなんですよ。…って,あれ?」 (満月の夜。屋根で逆立ちするウナギ犬) 満身傷つき体力も底をついて,ぶっ倒れている島を介抱する山崎。 山崎「(ぬれタオルを押し付ける)…もう少し要領よくなったらどうなんだ?」 島「(ぬれタオルを押し付けられながら)…アニメが違いますよ。おやじさん。…それにしてもあの写真の女性,どこかで見たような…」 |
本田 英臣
2006年10月22日(日) 19時11分50秒 公開 ■この作品の著作権は本田 英臣さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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