作者: 戦舟   2011年01月09日(日) 03時40分11秒公開   ID:T2SlLVuuolI
アルカディア号の主砲が火を吹き、敵戦艦部隊の先頭艦に光の矢が突き刺さる。
「初弾命中!どんなもんや!」 
ヤッタランが叫ぶ。続けて、ニ射、三射目が命中。
「キャプテン、敵1番艦行き足止まりました、脱落します。まだ敵艦隊は発砲しません。」
螢が報告する。
「よし、目標を敵2番艦に変更。敵の射程に入る前にできるだけ数を減らす。スペースウルフ隊、発艦開始!」
ハーロックは冷静に戦況を分析した。
ふむ、こちらの思惑通りに進み過ぎる。罠があって然るべきだが、問題はその罠が何かという事だな。
「敵水雷戦隊の右舷側群を“アインス”、左舷側群を“ツヴァイ”と呼称する。ウルフコマンダー、台場 聞こえるか?まず“ツヴァイ”を叩け。戦果を期待している。」
「ウルフコマンダー、了解。そちらも御武運を」
まず今打てる手は尽くした。後は奴らがどう来るかだ。
後方のエメラルダス号が射撃を開始する。片舷16門、合計32門のビーム砲が光を放つ。威力はともかくあの手数は、このアルカディア号すらも及ばない凄まじさだ。敵水雷戦隊からは、早くも脱落する艦が出始めている。
前方の空間に突如、光球が広がった。遅れて衝撃波が硬化テクタイトの窓を叩く。
「敵戦艦2番艦に命中弾、轟沈です!。3番艦以降が発砲開始」
「よし、面舵90度。同航戦に入る。主砲、目標敵3番艦。敵水雷戦隊の様子は?」
「阻止攻撃が成功しています。水雷戦の有効射程外で損害を与えています。“アインス”は70パーセント、“ツヴァイ”は50パーセントを撃沈破。」
その時、後方に遠ざかりつつあった惑星ヘビーメルダーの影から赤い光芒が放たれた。16本のビームが二隻の海賊船に迫る。
「六時の方向、ヘビーメルダー方面より高エネルギー反応!砲撃です。発射点からの距離、およそ120宇宙キロ以上、精密計測外!弾着まで4、3、2・・・今!!」
艦が激しく揺れた。至近弾が艦の周囲を乱舞する。おとりを使って、狙撃戦艦の超遠距離射撃!これが敵の仕掛けという訳か。後方のクイーンエメラルダス号をもエネルギーブレッドが掠める。本来、超遠距離射撃の命中精度は決して高くない。初弾から至近弾を受けるとは、敵ながら良い腕の射手がいるようだ。
「螢、これは狙撃戦艦だ。数を確認してくれ。速力、最大戦速へ!」
狙撃戦艦は、速度は遅いが射程距離は長い。とにかく交戦中の戦艦部隊を手早く撃破して逃げるなり、肉薄してこちらの交戦距離に持ち込むかしなければ大きな損害を被ってしまう。
「敵狙撃戦艦、隻数8・・・?!キャプテン、後方より攻撃機編隊を確認。狙撃戦艦部隊は空母を伴っている模様!!同航する敵戦艦部隊、距離を詰めてきます、相打ち覚悟のつもりですよ。」
螢の声にも焦りが感じられる。中々凝った罠だ。敵の指揮官は作戦目的をよく理解しているし、その為には戦力をすり潰す覚悟もあるようだな。こんな所で手傷を負えば機械化母星に向かう時間が失われてしまう。
「ハーロック、私は反転して狙撃戦艦を攻撃する。そちらは敵を振り切って目的地へ向かえ!」
エメラルダスからの通信が入る。真剣な表情だ。
「エメラルダス、女を盾に逃げるなど、俺にはできん。ましてや我が友がそれを許すはずもない。共に戦って血路を開く!衝角(ラム)戦用意!敵戦艦に砲撃しつつ肉薄、殲滅後に狙撃戦艦に向かうぞ!ウルフコマンダー、健在な機体は敵機を迎撃せよ!」
その間にも狙撃戦艦の砲撃は続く。手傷どころか大怪我の危険もある。敵機の数も多く、スペースウルフだけでは阻止しきれまい。不幸中の幸いは、敵水雷戦部隊はほぼ殲滅できた事だ。クイーンエメラルダス号も後続し、敵戦艦に向けて猛射を開始している。しかし、互いの距離が詰まった事で、こちらの損傷も出始めている。急がねばまずい。
「キャプテン!本艦と狙撃戦艦の間に時空震をキャッチ、何者かがワープアウトして来ます!!速い!!」
螢の声は悲鳴に近かった。さらなる罠なのか?いったいどんな手を打ってくる?
「ビデオパネル、拡大投影。ワープしてくる艦を確認しろ。」

ワープアウトしてくる艦を見た瞬間、俺は自分の目を疑った。あれは、まさか・・・!
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