敵襲
作者: 戦舟   2011年01月09日(日) 03時46分34秒公開   ID:T2SlLVuuolI
「5,4,3,2,1 ワープ!」
島の声が凛と響く。スーパーチャージャーの発する高周波が鳴り響き、重力アンカーで減衰しきれなかった加速Gが体を座席に押し付ける。ヤマトは連続ワープに入った。
俺はその時、奇妙な違和感を覚えた。背中を悪寒が走る・・・この感覚は!
「島、ワープを中断するんだ!早く!!」
「こ、古代 無茶を言うなよ!もう連続ワープに入っている。そんな危険な事が出来るわけないだろう?」
「とにかく艦を通常空間に戻すんだ、説明している時間は無い!」
もとより説明できる訳もなかった。これは俺のカンだ。でもこの悪寒は今まで何度も戦場で感じてきた何かに間違いない、何故かそう確信できた。
真田と島は顔を見合わた。山崎、南部、太田、相原ら第一艦橋のクルーも驚きの表情で彼らの指揮官を見つめる。そう、古代進の直感と決断力。戦場における“それ”の凄さを彼らは肌身に沁みて知っている。しかし、このワープ空間で幾らなんでも・・・そう真田が口を開こうとした瞬間、突然大きく艦体が揺れ爆発音が轟いた。太田が悲鳴じみた声で報告する。
「右舷展望室付近で爆発!原因不明です!自動緊急制動、強制ワープアウトします!通常空間まであと10秒」
艦内にアラート音が鳴り響く。かってないワープ中の大イレギュラーだ。俺は叫んでいた。
「衝撃に備えろ!通常空間に戻り次第、総員戦闘配置!」
そして艦を揺るがす衝撃と共に、霧が晴れるように視界に星空が戻ってきた。さっきとは逆に、強烈な減速Gで体が持っていかれそうになる。ワープアウトしたのだ。その刹那、ヤマトの周りを赤い光の束が何本も横切って行くのが見えた。
「右舷60宇宙キロに高エネルギー反応、反応数8。その後方にも4つの反応を確認、これは・・・真田さん!」
太田が叫ぶ。真田は真剣な表情で分析パネルを凝視している。
「このエネルギー反応は・・・暗黒星団帝国の無限β砲に酷似している。まったく同じではないが、同じ技術系統に属する兵器と見て間違いない。古代、これは敵の攻撃だ。デザリアムの狙撃戦艦の砲撃だぞ!むうッ、やつら生き残りの艦隊がいたんだ!」
太田が報告を続ける
「艦長代理!左舷方向60宇宙キロにも、同様の動力反応を示す複数の艦影、及び航空機を確認。こちらも暗黒星団帝国の残存艦隊と思われます!?・・・待ってください、デザリアム型と異なる動力反応を感知、何者かが、その残存艦隊と戦闘中のようです!右舷側の奴らの砲撃目標は、そっちです。」
「くそっ!暗黒星団帝国に生き残りがいたのか。しかし、戦闘中って・・・?」
俺はパニックっていた。つまりは、流れ弾が偶々、ヤマトに命中したというのか?しかしワープ中のヤマトに、何で通常空間からの砲撃が命中したんだ?
それに地球に残っている戦艦はヤマトだけのはずだ。すると暗黒星団帝国の残存艦隊と交戦中の艦は、いったい何処の所属艦なんだ?
やつらは、確か地球以外の国家と星間戦争を遂行中だ、と言っていた事がある。すると、俺達には未知の国家に所属する艦だろうか?
一気に様々な疑問が脳裏に渦巻く。しかし考える事のできる時間は短かった。
「敵狙撃戦艦の砲撃、こちらに標的を変更した模様です。集中してきます!新たな艦載機編隊もこちらに向かってきます!」
躊躇している場合ではない、反撃しなければ殺られる。そう思った瞬間に、すっと冷静な別の俺が心に降りてきた。
「島、最大戦速即時待機、面舵80度 敵艦隊に接近しつつ鼻面を横切る! タイガーリーダー、加藤!ヤマトの変針終了後にコスモタイガー隊発艦開始。敵攻撃機の迎撃に当れ!南部、主砲、波動カートリッジ弾発射準備。煙突ミサイルVSL、艦首艦尾魚雷発射管、舷側ミサイル発射管開け!砲雷撃戦用意。目標、敵狙撃戦艦。手の届く奴から順に叩くぞ。 副砲、コスモ三式弾発射準備。パルスレーザー砲統制射撃戦用意、敵艦載機群に照準合わせ! アナライザー、レーダー手席に着け!急げっ!!」
「了解、面舵80度、宜候。 最大戦速即時待機。山崎機関長、エネルギー増幅願います!」
「了解、エネルギー増幅。機関室、太助、そっちは行けるか?」
「機関長、任せてください!みんな準備できてます!!」
「こちらタイガーリーダー。変針後、一分で全機発進終了します。」
「波動カートリッジ弾、全主砲装填完了。既に測的は完了。副砲、コスモ三式弾装填完了。パルスレーザー砲、自動追尾セットオン。対空火器管制レーダー作動、異常なし」 
「近距離レーダー、戦闘モードニ移行完了シマシタ。敵味方識別装置、正常ニ作動シテイマス」
瞬く間に全艦が戦闘態勢に移行した。それを確認し、指揮官として満足している俺がいた。乗組員は望みうる最高の錬度に達している、これがヤマトだ 
「コスモタイガー隊、発進!」 
艦底の発進口から次々とコスモタイガーが飛び出してゆく。かっきり一分で彼らはヤマトの上方で編隊を組んだ。加藤から報告が入る。
「こちらタイガーリーダー。迎撃準備よし!いつでも行けます!」
「タイガーリーダー、以後の戦闘管制はアナライザーの指揮に従え。島、最大戦速、突撃開始だ!」

波動エンジンが雄叫びをあげ、艦尾のノズルからタキオン粒子の炎が鮮やかに煌く。宇宙戦艦ヤマトは最大戦速で突進を開始した。彼女が再び修羅となる時が来たのだ。
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