反撃
作者: 戦舟   2011年01月09日(日) 07時12分37秒公開   ID:T2SlLVuuolI
波動エンジンが唸り、ヤマトは一気に最大戦速に達した。敵の砲撃はヤマトの加速に対応できていないらしく、艦の後方へと逸れてゆく。
「敵、先頭艦との距離、55宇宙キロ」
冷静さを取戻した太田が報告する。すると真田が古代に進言した。
「古代、砲撃を開始するんだ。」
古代は驚いて真田を振り向いた。
「しかし真田さん、遠すぎます。届く事は届くでしょうが、命中弾は望めません。」
技師長は白い歯を見せて答えた。
「こんな事もあろうかと、波動カートリッジ弾に改良を加えておいた。弾体をベースブリード化し、弾頭に誘導シーカーを装備したのだ。射程の延長、命中精度の向上、どちらも果たしているはずだ。おそらく100宇宙キロでも届く。55宇宙キロは、充分に有効射程距離だ」
「真田さん!」「さすがは技師長だ!」賛美の声が第一艦橋に響く。
「よーし!南部、主砲発射!!」
「了解、1、2番砲塔 発射!」
直径46センチの砲弾が6本の青い光の矢となって伸びて行く。光が星空に吸い込まれ見えなくなってから数秒後、真っ赤な光球が彼方に広がった。
「敵先頭艦、レーダー反応消滅。轟沈した模様です」

ヤマトは吼えた。その度に新たな破壊が誕生し、幾多の命が失われるのだった。波動エネルギーは、暗黒星団帝国らしき艦隊に破滅的な威力を示し、彼らの先頭艦に続いて、2・3番艦も火達磨になるのにさして時間はかからなかった。あまりに一方的な戦闘に、古代は先程までの戦意が、急に唾棄すべき感情に思えてきたのだった。
「相原、敵に戦闘の中止を勧告しろ。『これ以上の犠牲を本艦は望まず。戦闘を中止し、撤退されたし』」
島は少し驚いた表情で古代を見たが、彼の命令に異議を唱えるような事はしなかった。古代の胸中を充分察しているようであった。相原が答える。
「了解。敵艦隊に対して発信します、『これ以上の犠牲を本艦は望まず。戦闘を中止し、撤退されたし』」
すると、一時の静寂が辺りを支配した。敵の砲撃が止んだのだ。太田が報告する。
「艦長代理。敵艦隊、後退をはじめました。」

古代は肩の力を抜いた。何とか犠牲の増加を食い止めたい、正直にそう思っている。彼らは憎むべき敵だ。しかし、何とか共存の道は無いのか?デスラーのように話し合える可能性はないだろうか?
「相原、敵艦隊の司令官を呼び出せ。話をしたい。内容は・・」
古代がそう言いかけた時だった。
「近距離レーダーニきゃっちシテイル敵攻撃機ニ動キガアリマス。、総数オヨソ120機、増速シテ突撃ヲ開始シマシタ!。2時ノ方向キョリ25宇宙キロ!」
頭部のメーター類を点滅させながら、アナライザーが報告した。

古代は唇を強く噛んだ。真っ赤な血が滲みでるが、何故か痛みを感じなかった。
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