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邂逅

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「ならば古代、話し掛けてみよう。それがお前のやり方じゃないのか?さっきだって、狙撃戦艦を全部倒してしまう事が可能でも、それをしなかった。対話を望んだじゃないか。」
「真田さん。倒せる時に倒す、逆襲を許さない為に。俺はそれをためらってしまった。指揮官として、乗組員の命を預かる者として、自分は正しい判断が出来ているんでしょうか?」
真田は、古代を厳しい表情で見詰ていたが、ふっと表情を緩めた。
「戦闘指揮官としては、確かにな・・・。しかしな、そんなお前だから、俺はついていこうと思えるんだ。敵であろうと、救える命は救いたい。そうだよな?信頼しているぞ、艦長代理!」
古代は第一艦橋を見回した。仲間達の視線が彼に集まっていた。皆、暖かい感情を湛えているのが分かった。彼は一瞬、ほっとした笑顔を見せると、すぐにきりっとした表情に戻っていた。
そんな古代に対し、太田がやや遠慮がちに話し掛けた。
「それと、艦長代理。これは私見というか、私の感想というか・・・。」
「・・・?太田、思う所があるなら聞かせてくれ。」
「はい。不明艦なんですが、確かにデータベースには無い艦影です。しかし、この艦のデザイン、意匠は明らかに地球人が関与していると思います。見てください。」
太田はビデオパネルに、ヤマトに追従してくる不明艦2隻を拡大投影した。それを見た真田は、驚きの表情を見せながら言った。
「太田。これは何かの冗談か?ドクロ型の艦首に船尾楼。それに、もう一隻は飛行船だぞ。おまけに2隻共、海賊旗まで掲げている。どうやって宇宙空間ではためかせているんだ?」
どうしても、細かいディティールまで気になってしまうのが技師長らしい。
「古代さん、宇宙海賊って奴ですかね?なかなか粋なデザインですよ。俺は嫌いじゃないなぁ。」
南部は何故か少し嬉しそうだ。あの艦達の容姿は、どうも彼の琴線に触れるようだ。
「南部。ヘンな事ではしゃぐな!お前の趣味はこの際どうでもいいんだよ。肝心なのは、太田も言うように地球人の艦なのかという事だ。」
古代にたしなめられ、南部は肩をすくめて顔をしかめた。そんな彼らを見ながら、少々困惑気味に真田が言った。
「しかし、2隻ともこのヤマトの大きさを凌ぐ巨艦だぞ。防衛軍で建造された艦で、そんな規模の物があるなら俺が知らない筈はない。それに・・・波動エンジンのエネルギー反応が無い。」
島が操縦桿を握ったまま、古代に話し掛けた。
「地球が新造する大型艦で波動エンジン以外の機関を搭載するなんて、考えられんよ。何か、また罠なんかじゃないだろうな?」
一同はデザリアム本星が、地球にカムフラージュしてヤマトを陥れようとした事を思い出していた。何とも言えない微妙な雰囲気が第一艦橋に漂う。誰もが事態を測りかねていた。沈黙を破ったのは、山崎機関長だった。
「化けるならこんな初めて見る形ではなく、既存の戦艦に化けるでしょう?暗黒星団帝国ならそう来ると思います。地球ですら、あそこまで精巧に模倣したんですよ?出来ない訳が無い。もっとも、左右逆にコピーしてしまうってのはあるかもしれませんね。」
一同、みんなが偽の“考える人”を思い出して失笑した。古代が苦笑いしながら山崎を見ると、機関長は軽くウインクしてこう言った。
「艦長代理、当って砕けろです。話がわかる相手かどうかは、話してみなきゃ分からんでしょう?」
古代は胸の中のつかえが、すっと消えてゆくような感覚を覚えていた。そう、俺は一人じゃない。協力しあえる仲間達と、このヤマト≠ェある限り、どんな相手だろうと恐れる事はないんだと。
「相原、不明艦の指揮官宛に通信を送れ。こちらの所属、艦名と敵対の意思が無い事。対話を望んでいる事を伝えてくれ。」
「了解、発信します。『我、地球防衛軍所属 宇宙戦艦ヤマト=B 我に貴艦らと交戦する意思は無し。話し合いにより、双方の安全を確保したし。返信を請う。以上。』」


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