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過去からの来訪者

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「俺はアルカディア号≠ニいう宇宙最強の戦艦のキャプテンだという自負が、もちろんある。・・・フヌけた地球人達の事は哀れにも思うが、彼らが何も変えようとは思わず、現状を受け入れ続けるのならば、あえて俺がどうこう言う事でもないと思っていた。だから、最強の艦を使って地球を救う、などというヒロイズムは考えもしなかった。俺の思う自由を共感できる奴らと一緒に、それを謳歌する事が出来ればそれで良いと思っていたのだ。」
「星野鉄郎はな、ハーロック。俺達が半ば見捨てた地球にも、自由を欲し、圧政を憎む人間らしい人間が今でも生まれているという証さ。まだまだ弱い子供だが、心根は強い。偉大な母と高潔な父に体も精神も引裂かれて、どうしたら良いかわからなくなっている、あのメーテルですら、鉄郎の存在を思うあまりに、生身の人間へと心が傾く自分に狼狽している。鉄郎を失う事は出来ないぞ。あいつの心には、擦れた大人の魂に何かを感じさせる瑞々しさがある。鉄郎の親父の事は残念だったが、血は争えんな。あいつはきっと大物になる!人類も捨てたもんじゃないよ。」
ハーロックは隻眼をカッと見開くと、強い意志を感じさせる声で言い切った。
「自分達だけの遊びの時間は終わりだな。機械人間どもの下っ端を突付いて自己満足に浸っていても、幸せなのは俺達だけだ。ドクター・バンは、決着の時が来たと思っている。自分の愛娘に集めさせた人々で造った、惑星メーテルの主要部品達を解放し、機械化母星を自壊させるつもりだ。その起爆剤を鉄郎に求めている。彼も少年の精神の気高さに賭けるつもりだろう。だが、鉄郎を惑星メーテルと心中させてはならんな。俺も遅ればせながら気が付いたのだ。実はまだ人間が好きで、その可能性を信じていたいという事に。」
「鉄郎の将来に、人類の未来を求めるという事か。ならば、ヤマト≠ノは何を求めている?何故追跡しているんだ?波動エンジンや、そのエネルギーを利用した超兵器達が欲しいのか。」
「もちろん興味はある。だが、それよりも俺が気になるのは、何故このタイミングで伝説の戦艦が古から蘇ってきたのか?だ。物事には全て何等かの意味がある。どんな偶然にも人間如きには気付く事が出来ないような理由がきっとある。だから、コンタクトしてみたい、過去からの来訪者と。知りたいんだ、彼らが何故ここに来たのか?時を越えたヤマト≠フ意思か、或いは宇宙の神の思し召しなのか、それとも何かの罠なのか。」
「・・・そうしたいから、そうする。それがお前だよな、ハーロック。お前の閃きのおかげで、俺達は何度も死線を掻い潜ってきた。今度もそうする事にしよう。確かに、味方になってくれるならこれほど力強い相手はいない。それにまあ、俺にしても自分の知的好奇心は隠せん。俺の知り得たヤマトとは、少々違う所もあるしな。記録によると・・・」
トチローがそこまで言ったとき、艦橋からヤッタラン副長の艦内通信が入ってきた。彼は、ここにハーロックがいるのは神聖な時間を過ごす為だと知っている。余程重要な事でない限り、割り込んでくるような事は無い。と言う事は・・・
「キャプテン!あの戦艦が呼び掛けてきたで!自分は宇宙戦艦ヤマト≠セって名乗っとる。こっちとお話したいって言っとるけど、どうしまっか?」
「わかった、副長。回線を開いてこっちに繋いでくれ。俺が直に話をすると伝えろ。」
「仰せの通りに、キャプテン。」

ハーロックは室内に備えられたビデオパネルの前に進み出る。ビデパネルが反応し、若い男が映し出された。彼は思う。この若さで、あれ程のキレを見せる戦闘を指揮したのか。さぞかし多くの修羅場を切り抜けてきたに違いない。・・・不思議と何処かで知っている男のような気もする。何にせよこれまでに出会ってきた、歴戦の勇士達と同じ匂いがする、嬉しいじゃないか。


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