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混乱

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「相原、地球との通信状況はどうだ。交信は可能か?島、ヤマトの現在位置を概略でいい、すぐに測定して報告を頼む。」
「艦長代理。地球との交信、回復しません。タキオン通信の一般回線、非常用周波数、どちらも呼び掛けに対する返答なし。通信不能です。なお、通信妨害等の形跡はありません。」
「古代、航海班は第二艦橋で既にヤマトの現在位置を確認中。おい太田、どうだ。もう結果は出たのか?」
「はい航海長、おおよその現在位置を確定。こ、これは・・・天の川銀河からM31、アンドロメダ銀河を結ぶ直線上。オリオン腕、地球の推定位置からおよそ200万光年!前人未踏の遠宇宙ですよ、ここは!」
第一艦橋は静まり返った。有り得ない現実の重圧が、一気にヤマトのメインスタッフ達に降りかかってくる。一同の視線は、分析パネルを操作する真田技師長に向けられた。
「今、全天球レーダー室の観測データーを精査した。艦長代理、みんなも聞いてくれ。崩壊した筈の二重銀河が、観測されている。波動融合反応でガス星雲化してしまったあの天体が、何故か元の健在な姿のままで存在しているんだ。」
古代は息を呑んだ。自分の直感が間違いであって欲しいと、これ程願った事は今までに無かった。
「真田さん、あなたの意見を聞かせてください。ハーロックの言っている事を、どう思いますか?」
「キャプテン・ハーロックの言葉の真偽は、今ある情報で即断は出来ない。だが我々が置かれている状況は、ある程度推測出来る・・・。イレギュラーでワープアウトしたにせよ、今、ヤマトのいる宙域は、常識的には在り得ない場所だ。本来ならば、ワープで湾曲される通常空間の内の、何処かに放り出される。つまり二重銀河と天の川銀河の間の宙域、という事だ、だが現実に、我々はアンドロメダ銀河を望む、この場所を航行している。そして、今ここで観測されている二重銀河が本物だ、というのが現実ならば、恐らくこの宇宙は、我々の知っている宇宙ではない!・・・古代、平行宇宙というのを聞いた事があるか?」
真田の言葉を聞いて、それまで黙って成り行きを見守っていた山崎機関長が声を上げた。
「いくら暗黒星団帝国がレプリカ好きでも、島宇宙を丸々一個、偽造するのは不可能でしょう?技師長の言うとおり、推論とデーターから導き出される結果がそうだというなら・・・」
「我々が今いるこの宇宙は、パラレルワールドの一つである。さしずめヤマト≠ヘ異邦人となってしまった、という事ですかね。」
山崎の言葉を、南部が引き継いで答えた。真田は渋い表情のまま頷く。
「我々の知識では、現状の理解は困難だ。特に、ハーロックの言う、時間の経過については、今すぐに検証出来る情報、材料が無い。だが、観測、測定される座標や天体のデーターを信じない訳には行かない。それを受け入れた上で考えると、我々は、自分達のいる次元とは異なった平行宇宙にいるとしか考えられない。」
島が、戸惑ったような、少し怒ったような口調で反論する。
「もう少し慎重に考えたほうが良いのでは?コンピューターに何か仕掛けられて、データーが操作されてないか検証したんですか?空間だけでなく、時間まで飛び越えて移動したなんて、あまりに突拍子もないですよ!」
真田は島に視線を投げると、彼を諭すかのように話した。
「もちろん、計算ミス、コンピューターウイルスによる妨害等、何度も検証した。三次元立体天球儀の座標データーも、航海班がそんな事はチェックした上で算出したんだろう?なあ島、俺達技術屋は、自分がベストを尽くした仕事を信じなければ。信じたくない計算結果が出ても、理性でもって正しい物を判別し、受け入れなくてはいかん。そこに歪んだ主観を差し挟んでは、指揮官に間違った情報を与えてしまうぞ。」
航海長は黙って下を向くと、拳を握り締める。そんな様子を見た古代は、彼の肩を軽く叩いた。島は我に返ったかのように古代の方を振り返った。


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