■一覧に戻る
■ページ指定
■感想を見る・書く


混乱

  [←]  【PAGE 3/3】


「島、お前達のチームの仕事は早くて正確だよ。いや、ヤマト全体がそう言えるかな?とりあえず、データーは正確なんだ。ただ其処から導かれる現実を、我々が理由付けできていないだけさ。弱みを見せたくはないが、やはりあの海賊船≠ニ対話を再開して情報収集だな。ハーロックの話が本当なら、彼らは地球人なんだ。」
「古代・・・すまない。偉そうに任せろと言ったのに、航路を外れてしまった。その事に必要以上に焦ってしまったみたいだ。」
古代はニッと笑うと、島の胸を軽く小突いた。彼の親友でもある航海長は、苦笑いすると頭を掻く。その様子を見ていた第一艦橋の面々には、少しほっとした空気が流れていた。
それを察した真田は、古代の笑顔を見ながら考えていた。島をダシにして、スタッフの緊張を和らげるとは。やるじゃないか、艦長代理。いや、そんな腹芸は無理か?本能的にそういった事が出来るのだから、やはり人を統べる才能が豊かというべきなのかな?古代守とは違う方法ではあるが、なかなか指揮官っぽいじゃないか。
「よし!相原、もう一度ハーロックを呼び出してくれ、通信を再開する。」
古代がアルカディア号を呼び出そうと命令を発した瞬間、事態は急変した。
「艦長代理!遠距離レーダーに反応!大型の時空振をキャッチしました。宇宙艦のワープアウト反応、本艦の前方、100宇宙キロ。数は・・・増え続けています!50・・・100・・・精密計測不能、大艦隊です!」
太田が報告しながら真田を振り返った。真田は自席のパネルに飛び付き、大急ぎでその艦隊を解析する。
「古代!さっきの奴らと同じ動力反応だ!暗黒星団帝国の、いや機械化帝国の宇宙戦艦だ!凄まじい数だぞ!」

宇宙の、時間の孤児となった宇宙戦艦ヤマトに、容赦なく試練が襲い掛かる。古代は決断を強いられていた。彼は舷窓から、ヤマトと並走するアルカディア号とクイーンエメラルダス号を見た。二隻は戦列を組んだまま加速し、ヤマトを追い越して行く。彼らはやる気だ。数の差に怖気づく様子も無く、悠然と航行している。
その後姿を見つめながら、古代は考えていた。今は生き延びる事だ、全てはそれからだ。彼は叫んだ。
「みんな、一緒に地球に還るぞ!きっと何か、元の宇宙に帰る方法がある。故郷に、俺達の地球に戻る事が出来る! その為には、歯を食い縛って生き延びねばならん!死力を尽くせ!!総員、戦闘配置!」

二隻の海賊船を追って、ヤマトは征く。故郷へ還る為、彼女は再びその恐るべき威力を解放しようとしていた。


  [←]  【PAGE 3/3】



作者: 戦船
投稿日:2011年04月30日(土) 01時17分20秒
BYTE数:8 KB (4243字)

■感想を見る・書く
■ページ指定
■一覧に戻る