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共同戦線
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艦長代理、ヤマト指揮官古代進≠フ若さ故の未熟さを、第一艦橋の皆は誰も気にしてはいない。それを受け入れた上で、古代の資質と人柄を認めているのだ。だが、年長者である俺が、不安げな所を見せてしまうと、皆が動揺してしまう。お前はそう言いたいのだな?・・・古代、君を弟のように思っていたのは確かだが、俺は君を少々見くびっていたのかもしれん。なかなか厳しいご指摘だが真理を突いているぞ。自分の役どころを間違ってはいかん。確かに、俺は後輩どもに活を入れる立場でなくちゃあな。
真田は自分の脳裏で、一瞬の間にそれだけ考えると、快活さを感じさせる大きな声で、年下の指揮官の問いに答えた。
「その通りだ、艦長代理。この短時間で、機械化帝国が波動カートリッジ弾に対する、有効な対策を施してきたとは考え難い。おそらくこの戦いでも、波動カートリッジ弾は奴らに対して、絶対的ともいえる威力を見せるだろう。ヤマトは、主砲一門あたり100発、全部で900発の波動カートリッジ弾を備蓄している。さっきの会戦で少々減ってはいるが、充分戦える残弾数だ。もっとも相手はあの大艦隊だ、余裕たっぷりでもない。南部よ、全弾命中は流石に望めないだろうが、ここはお前の腕の見せ所だ。あんまり無駄弾を出すな、頼んだぞ!」
「えェー!ここでそのプレッシャーはあんまりですよ、技師長! まあ、やるしかないんですけどねぇ。」
南部の場違いな脱力ぶりが、皆の笑いを誘う。微笑みながら真田に視線を流す古代に、真田は軽く親指を立て、ニヤリと唇の端をつり上げた。
ヤマトの第一艦橋の様子を、ビデオパネル越しに窺っていたキャプテン・ハーロックは、賛美の念を抱いていた。ヤマトの乗員達の戦意の高さと、それを維持させている指揮官。彼らは突然、異世界に放り込まれたのだ。混乱と重圧で、まともな思考など出来ないような、厳しい状況の筈。なのに、彼らは乱れる様子も無く、目前の戦闘を生き延びる事に集中している。間違い無く一騎当千のツワモノ達だ。伝説の宇宙戦艦≠ニの出会いは、この勇敢な男達と知己を得る機会だというならば、それが宇宙の神から賜った宝なのかもしれん。是非この戦いを勝ち抜いて、彼らと共に勝利の杯を挙げたいものだ。
再び上機嫌な表情となったハーロックは、ビデオパネルの向こうの古代に話しかけた。
「古代、アルカディア号は海賊島≠ニドッキングして、敵戦艦部隊を引き付ける。この海賊島≠フ火力と防御力は、中々のモノだぞ。長時間の砲戦を持久し、かなりの数の敵を撃破できるだろうと踏んでいる。その間に、君達はクイーンエメラルダス号と共同で、両翼の水雷戦隊を叩いてくれ。・・・それとヤマトには、もう一つ頼みたい事がある。」
「ヤマトに頼みたい事、ですか?・・・それは何です?」
「機械化帝国艦隊は、通常ならば戦艦部隊に、エアカバーの空母部隊が随伴している筈なのだ。しかし、あの艦隊には空母がいない。何処かに隠れて、こちらを窺っているに違いない。君達の艦載機部隊に、索敵をお願いしたい。」
古代は、戸惑った表情でハーロックに問い返した。
「ハーロック、あなた方にも艦載機部隊があったのでは?偵察機を出そうにも、我々は、この辺りの詳細な三次元宙域図も、星間物質分布図も持っていないのです。周辺の情報を豊富に持っている、あなた方の艦載機部隊の方が、その任務には適任に思えますが?」
「隠れて行動しているつもりの敵を出し抜いて、こちらが奇襲をかけたい。その為に隠密偵察と行きたい所だが、こちらの艦載機部隊、スペースウルフ隊は、隊長機以外は遠隔操作による無人機なのだ。大まかな指示を与えておけば、ある程度は機体自身が、自分で判断を行なうロボット的な機能を持ってはいるが、お忍びで覗きに出かけるような、繊細な行動は難しい。宙域図等の情報は全て提供する。君達の力を貸して欲しい。」
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