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ファイター・パイロット
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そして混乱の中、私は発見した。崩壊する惑星を脱出し、外宇宙へと逃れて行く宇宙船を。奴らには、逃げ延びる場所があるというのか?私は数少なくなった艦隊の中から足の速い艦を選出し、脱出船を密かに追跡させた。そしてたどり着いた先が地球=B自爆した女王の星に良く似た、碧く美しい惑星だ。ただ、この惑星は双子星達とは違う所もあった。多くの知的生命体、そしてその他にも多くの命を宿す、活力溢れる天体だったのだ。
「ハードギア様、ファウスト様より通信文が届いております。」
唐突な部下の呼び掛けに、彼の回想は中断させられた。ハードギア≠ニ呼ばれた男は、不機嫌そうに部下の方を振り返る。
「内容を報告しろ、手短にな。」
「はい。打撃戦部隊はこれより反逆者どもと交戦体制に入るそうです。予定通り宙航機の発進準備を成せ、との事です。」
ハードギアは、それを聞くとより不機嫌さを増した様子を見せた。
「ふん、俺がサポタージュでもすると思っているのか、奴は。督戦とは、馬鹿にされた物だな。」
困惑した表情の部下を無視して、彼は正面を向き直ると窓外の暗黒ガス雲を凝視した。
「進撃開始だ!距離を詰めるぞ。」
「しかし、ハードギア様。あまり近寄ると敵に発見される恐れがあります。現在位置でも、攻撃機部隊の航続距離に無理はありません。無用なリスクを犯す事はないと考えますが。」
部下が慌てて進言するが、ハードギアは聞く耳を持たない。彼の心中は、黒騎士ファウストへの憎悪が燻っていた。
ファウスト。まったく気に食わん男だ。女王を懐柔し、身体機械化への決断を促がし、今ある大帝星の礎を築くよう導いたのはこの俺だというのに。何故、奴がその軍事力の中枢に居座っているのだ?この俺を差し置いて、艦隊司令官だと?まったくもって気に食わん。俺が首尾よく空襲に成功しても、手柄はファウストの奴の物になってしまう。そんな馬鹿な話があるか!?
「海賊どもは打撃戦に夢中だ。気付いたりはせん。もっと接近するのだ!この機動部隊にも戦艦がある。ファウストの奴がしくじらんとも限らん、いつでも戦場に飛び込めるよう、間合いを詰めよ!」
空母群とその護衛艦艇は、ガス雲と岩隗が渦巻く空間を、ヤマト達に向かって加速し始めた。
加藤四郎はコスモタイガーUを巧みに操りながら、暗黒ガス星雲の内部を飛行していた。ガスに遮られ、視界は良好とは言い難い。レーダーの精度、通信機能も大幅にダウンしている。計器飛行に頼って飛行を続けるのは困難な状況だ。もっとも敵に逆探知されるのを避ける為、大出力の索敵波は発信できないのだが。五感を研ぎ澄ませ、小刻みに進路と推力を調整しながら、加藤は思う、
こいつは手強いフライトだな。俺も澪みたいに、透視能力でもあれば苦労しないんだが。
真田 澪。最後のイスカンダル人、サーシア。 短い間だったが、イカルスの秘密基地で寝食を共に過ごし、戦禍の中で夭逝した美しき同僚。束の間、彼女の面影を脳裏に画いていた加藤の眼前に、突如として暗黒ガスの影から飛び出してきた岩隗が迫る。目一杯、姿勢制御用のバーニアを吹かし機体を垂直にしながら横滑りさせ、コスモタイガーUは岩隗の表面を舐めるようにして回避する。
危ない危ない、他所事を考えてる場合か、俺。こんな事であの世行きじゃあそれこそ、澪に顔向けできんぞ。
汗ばんだ掌で操縦桿を握り直す加藤に、後席の相棒がのんびりとした口調で話し掛けてきた。
「したばって加藤隊長、大した腕前だ。これだけ電波障害がひどいと、有視界飛行しかないんずや。でもガスで視界もこったら有り様だ。わの腕前じゃあ、うだでコスモタイガーば飛ばせる状況じゃあないだ。」
「古屋、相変わらず訛ってるな。何かホッとするよ、お前と話してると。」
「な、訛ってなんかいね!いやもとい、訛ってねっすよ!あ、あれ?」
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