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ファイター・パイロット
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「いいよ、無理に直さなくても。その方が古屋らしいからな。でもお前のおかげで、どんな宇宙言語でも受け入れ可能な気がするよ、俺。」
「全然、誉め言葉になっていねよ、隊長!」
加藤は苦笑しながら、後席の相棒の抗議を無視する。
こいつ、機載電子機器の扱いや暗号の知識は凄いんだが、喋る言葉まで暗号顔負けなのは、冗談キツイよな。まあ、一緒に居る時間が長くなったおかげで、かなり解読≠ナきるようにはなったけれど。
「それより、まだか古屋。逆探に反応はないのか?短距離通信波の傍受はどうなんだ?」
「逆探、まだ何にも反応ねじや。通信の傍受も同じだ、何もねじや。隊長、ほんまに、こったら所に空母がいるんだんずな?」
「周辺宙域で艦隊が隠れていそうな所が数箇所あってな。それぞれに偵察機が飛んでるだが、古代さんが考えてる本命は、多分この暗黒ガス雲だよ。だからこの特別仕様機が出張ってるんだ。」
彼等の操るこの機体は、三座型のコスモタイガーUだ。だが、本来ならば旋回機銃座がある場所に、巨大なレドームが鎮座している。早期警戒機仕様に改装された、このコスモタイガーUの外見上の最も大きな特徴だ。電子戦能力に長けた機体だが、現在ヤマトに配備されているのはこの一機だけ。いや、ヤマトどころか地球防衛軍でもこの一機だけだ。真田技師長が試作を兼ねて、ヤマト艦内で改装した機体なのだ。飛び抜けて通信・索敵等の電子戦能力が高いこの機体でなければ、このガス雲内を索敵する事は難しかっただろう。
不意に、後席の古屋が無口になった。計器の操作に集中し始めた様子だ。それを察した加藤も、操縦桿を握る腕が無意識に強張る。
「隊長、通信波と思われる微弱電波ば捕捉した。距離は不明だば、方位は2時の方向、上下角+−ゼロ。そったらに遠くはないと思うんだばって。」
遂に来たか!此処からが腕の見せ所だ。加藤の額に、緊張からくる汗がどっと噴きだした。
「了解、進路変更、。2時の方向、上下角+−ゼロ。逆探の反応はどうだ?」
「反応はねじゃ。敵は長距離レーダーば使っていねようだ。えらく不用心だべ。偵察機に接触される危険ば考えていねのかな?」
「身を隠すのを最優先してるんだろう。レーダーってのは強力な索敵波を発信する訳だから、見方を変えれば自己位置暴露装置だからな。それに、奴ら偵察機を繰り出してくるような相手との戦闘を、経験した事は無いんじゃないか?あのアルカディア号≠ニかは、無人機の航空隊しか持ってないそうだから、航空戦に関しては何時も攻めの一手で行けたはずさ。今まで隠れんぼで遊ぶ機会が無かったって事だな。おかげでこっちから奇襲を仕掛けるって作戦も成立する訳だ。」
「凄いだね、加藤隊長。伊達に隊長ば務めてる訳じゃないだべ。頭良いんだな、見直したんずや。」
「まあな、恐れ入ったか!・・・って言いたい所だが、残念ながら全部古代さんの受け売りなんだ。艦長代理は、おそらく敵は逆探を警戒して、索敵波を極力出さないようにしているはずだって言っていた。奴らはヤマトの位置を確実に捕捉しているけれど、こっちは敵空母の居場所をまったく知らない。わざわざ発見される危険を冒してまで長距離レーダーを使う事はないんじゃないかって。ホント、大当たり。あの人、やっぱり単なる野生児じゃあないよな。」
「何だ。感心して損したんずや。でも、確かに古代さんは凄い人だと思うんだばって。歳なんて大して変わらねのに、なしてわとあの人はこったらに違うんだべ。」
軽口を交し合いながら飛び続ける二人の前に、一際大きな岩隗が輪郭を濃くしてきた。小惑星と言っても良い位の規模の大きさだ。加藤は機体をその小惑星の表面に降下させながら周囲の様子を窺う。
「隊長、逆探に反応だ!多分、近距離レーダー波、おそらくこの小惑星の裏側だ。高度ば上げないで!探知されんずや。」
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