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感情
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「メ、メーテルさん!?一体どうしたんですか?」
今までの旅では、終着駅で同行者を降ろした後の彼女が、999を訪れる事は無かった。メーテルの姿を再び見るのは、新しい旅が始まる時と決まっていた。何故、今ここに彼女が?車掌は混乱していた。
「車掌さん、機関車と話がしたいの。中に入れて、お願いします。」
「あ、はぁ?そ、それは全然構いませんが・・・何故、一体何をなさるおつもりですか?」
「そう、他言は無用よ。誰にも知られたくないの。誰にも≠諱B分かりますね?」
穏やかな言葉の裏の、激烈な決意、感情に車掌は戦慄する。先程の大艦隊の発進といい、メーテルの徒ならぬ様子といい、一体何が起こっているんだ?
「・・・分かりました、お入り下さい。監視装置は全て停止させておきます、メーテル様▲
「ありがとう、車掌さん。本当は貴方達を巻き込みたくはないのに、御免なさい。」
小さな声で切なそうに感謝し、謝るメーテル。車掌は苦悩する彼女の感情を読み取っていた。
「私は車掌室におります。所用が済みましたら、お声をお掛け下さい。・・・では。」
機関室内は、薄暗い照明とメーター類のバックライトで、紫紺の妖しい雰囲気を醸し出していた。メーテルは室内に入ると、生体認証パネルに手を置いて999のコンピューターに話し掛けた。
「C-62-48°竕ヘ超特急999よ。ラー・アンドロメダ・プロメシュームU世≠ェ娘、機械化帝国の王女であるこのメーテルが命じる。思考リミッターを解除せよ!」
電子頭脳が唸りを上げて起動すると、赤い光がメーテルの瞳に照射される。仮初めの体の網膜パターンを読み取り、次いで指紋、掌形、声紋、と次々に生体認証が行なわれた。
「コチラハ銀河超特急999。メーテル王女デアルト確認シマシタ。解除コードト解除キーヲドウゾ」
メーテルは胸のペンダントを外すと、無造作に分析ボックスに入れる。そしてその良く通る声で叫んだ。
「認識コード・“X−00999”!電子妖精カノン、目覚めなさい!」
一瞬、スパークしたかのように光が迸り、機関室を満たす。光は次第に人型のシルエットへ、そして女性型のアンドロイドへと変身した。
「お久しぶりです、メーテルさん。私が目覚めたという事は、時の環の接する瞬間が近づいている。と考えて宜しいのですか?」
「カノン、それを知りたくて貴方を呼んだの。999の能力が必要なのよ。秘匿通信をお願い。」
「承知致しました。お相手は誰ですか?キャプテン・ハーロック?」
メーテルは、少し狼狽して目を伏せる。逼迫した状況を思い出し、カノンを叱責しようと慌てて視線を上げると、電子妖精は無邪気に微笑んでメーテルを見つめていた。彼女は思った。そうね、カノンはそんな邪推はしないものね。
「通信先は、コードgX−00001°}いでちょうだい、時間はあまり無いと思うの。」
「了解しました。ランダム変調ワープ通信、回路オープン。クイーンエメラルダス号≠フ現在位置を、銀河鉄道管理局のマザーコンピューターより検索、送信開始します。」
孤高の女海賊、クイーン・エメラルダス。彼女は束の間の休息を取っていた。卓上にはワイングラスが二つ。エメラルダスは酒を並々と注ぐ。 燃える星の海≠なたはこのワインが好きだったわね。 片手にグラスを一つ持つと、彼女は舷窓から宇宙を望んだ。ダークグリーンの宇宙戦艦が見える。トチローそのものになったアルカディア号。でも、出来れば真っ赤な血が脈打つ、暖かい体の貴方と再会したかった。彼女は思いを飲み干すかのように、一気にグラスを空にする。そしてもう一つのグラスの中の赤い液体と、アルカディア号を交互に見比べた。
その視線は、アルカディア号のさらに向こう側に見える、見慣れない宇宙戦艦へと焦点を移した。宇宙戦艦ヤマト*{当に、あの伝説の大戦艦だというの?トチローとハーロックは信じているというけれど、私は大昔の御伽噺としか思っていなかった。大体どうしてそんな物が、時間を超えてここにいるのか、二人とも納得できる説明はしてくれそうもないわね。ハーロックのカンってヤツか。馬鹿らしいけれど、何故か外れた事が無い・・・。本当に、宇宙という物は神秘と理不尽で出来ているのね。どれだけ旅を続けても、その思いは強くなるばかり。きっとメーテルも頷いてくれるわね。久しぶりに再会した、銀河鉄道で旅を続けている妹。その姿を思い浮かべ、彼女は微笑した。あの娘も私と同じ。今も辛い旅を続けている・・・。
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