■一覧に戻る
■ページ指定
■感想を見る・書く


感情

  [←] [→]  【PAGE 3/4】


不意に、通信パネルが電子音を奏でた。エメラルダスが訝しげに回路を開くと、今しがた思い出していた彼女の妹が映し出される。噂をすれば影、か。もっとも、このクイーンエメラルダス号≠ノいるのは私一人。独り言でしかないけれど。
「エメラルダス。今、何処にいるの?アルカディア号も一緒なの?お母様は、女王プロメシュームは、貴方とハーロック達が機械化母星に攻撃をかけてくると予想して、艦隊を集めていたわ。でも、何故かその艦隊が全て、何処かへ出撃していったの。何かが起こっているの?知っている事があったら教えて!」
エメラルダスは、少し驚きを感じていた。プロメシューム、流石に動きが早い。あの艦がヤマト≠ゥどうかはともかく、その破壊力には脅威を感じたという事ね。
「メーテル。ハーロック達は、鉄郎を助けると決めたわ。私も一緒に戦う。前衛艦隊はもう打ち破ったわ。もっとも、貴方の言う艦隊と比べたら、微々たる物だけれど。」
メーテルの美貌が驚きに歪む。
「そんな・・・正面からやり合っては、いくら貴方達でも危険だわ。勝ち目があると思っているの?」
「心配してくれるの?ありがとう。でも、私達だけじゃあない。どうも強力な援軍を、宇宙の神が送ってくれたらしいの。」
目を伏せて諧謔味たっぷりに話すエメラルダスに、メーテルの困惑は深まるばかりだった。
「どういう事?アルカディア号とクイーンエメラルダス号の他に、戦力になるような艦はこの宇宙には・・・」
「貴方は知っている?宇宙戦艦ヤマト≠。私は見たの。狙撃戦艦の装甲すら紙切れ同然に打ち破ってしまう、凄い砲撃だった。」
エメラルダスがそう言った瞬間、電子妖精カノンの両眼が白く輝いた。強烈な電流が彼女の回路をオーバーロードさせ、通信が途絶する。分析ボックスの中のペンダント、解除キードクター・バン≠ェその原因だった。メーテルは、急いでカノンを抱き起こす。しかし彼女は過負荷から立ち直れず、通信を続ける事は不可能だった。
「車掌さん、聞こえますか?御免なさい、コンピューターが故障したらしいの。機関車まで来て下さい。」
車掌室に通信を入れると、メーテルは分析ボックスからペンダントを取り出した。それは白い煙を噴出し、弱々しく点滅していた。感情エネルギーを制御できず、セーフモードになってしまっている。
「時が。時が来たのだ、メーテル。ヤマト≠ェ、波動エネルギーが、この歪んだ世界を修正する。必然の呼んだ奇跡なんだ、これは。」
譫言のように呟くドクター・バン≠フ様子に、メーテルは宇宙に起きつつある異変を感じていた。お父様をここまで、前後不覚の有り様にさせるなんて。何者なの?宇宙戦艦ヤマト=B

アルカディア号のブリッジでは、ヤマトと同じように敵大艦隊を捕捉、戦闘準備に入りつつあった。ビデオパネルを凝視するハーロックに、エメラルダスから連絡が入る。
「ハーロック、メーテルから秘匿通信が入った。機械化母星に集結していた艦隊の殆どが一斉に出撃したそうよ。あそこに屯している連中が、機械化帝国のほぼ全力ということらしい。どうする?」
「・・・それは愉快な情報だな。すると奴らを全て屠れば、惑星メーテルは空っぽという事だな?いきなりクライマックスという訳だ。」
「相変わらず、楽天的な物言いね。正面から行こうと思っているの?」
ハーロックはニヤリと笑う。そして聞き様によっては、傲岸不遜とも自信過剰とも思える宣言をした。
「俺は、俺とトチローが造り上げ、志を共にする仲間が動かすこのアルカディア号を信じている!背中を見せる事は有り得ない!」
双発の次元振動流体重力エンジンが唸りを上げ、アルカディア号は猛然と加速を始めた。クイーン・エメラルダス号も追従する。
アルカディア号の船尾楼を見つめながら、エメラルダスは戦闘の準備を進めていた。その集中力を、またしても秘匿通信の呼び出し音が中断させる。彼女は不機嫌な表情で回路を繋ぐが、映像は受信されなかった。そしてスピーカーから、彼女が捜し求めていた男の声が流れ出した。


  [←] [→]  【PAGE 3/4】



■感想を見る・書く
■ページ指定
■一覧に戻る