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苦境
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それがお前の隠しダマか、ファウスト=Bいや、正、物野 正=Bそいつがジョーカーだというのなら、お前も座乗しているのだろう?お前と刃を交える事など、望んでいた訳ではない。だが、降りかかる火の粉は払わねばならん。
「副長!使用可能な全砲門をあの巨大要塞群に向けろ!正面の艦隊は、とりあえず無視だ!」
「ホンマでっか、キャプテン?背後を無防備にさらすのは、あまりにリスクが高すぎまんねん!」
「大丈夫だ、背中は必ず彼女が守ってくれる!」
驚いてビデオパネルを振り向くヤッタランの視界に、敵艦隊と海賊島の間に全速で回り込むクイーン・エメラルダス号の姿が飛び込んできた。激戦の中、被弾による損傷も認められるが、その攻撃力は健在だった。体中から粒子ビームやミサイルを迸らせて敵艦隊の行く手を遮ろうとしている。
「ヤッタラン副長。エメラルダスが頑張っている間に、あの要塞達を叩かねばならん!急げ、一斉射撃だ!」
意を決したヤッタランは、手元にある射撃制御盤を操作し目標を選定する。パルサーカノンは破壊されて数を減らしているとはいえ、まだ八割以上の砲台が健在だ。第一目標は、単縦陣の先頭にいる奴だ。彼は眦を決すると、ターゲットスコープを覗き込み、引き金に指を掛けた。
「パルサーカノン、斉射三連!いきまっせ!」
まったく、本当に今度の戦いは貧乏くじの連続だわ。雲霞のような水雷戦隊と戦ったと思ったら、今度はより重装甲重火力の戦艦どもと、同じように殺り合えって言うのだから。いくらこのフネが戦闘艦だといっても、こう傷だらけになる始末では、この艦の前所有者、ゾナラーナに申し訳ない。それにしても、あの巨大な要塞艦、あれは初めて見るタイプだわ。トチロー、ハーロック、気をつけて。背中は任せておきなさい。
クイーン・エメラルダス号≠ヘ、孤独な戦いを強いられていた。敵戦艦部隊の動きに、変化が現われていた。海賊島への砲撃を中止すると、クイーン・エメラルダス号≠包囲する動きを取り始めている。海賊島よりも先に彼女を叩こうという意図が明白だ。だがエメラルダスは信じた。彼女の想い人と親友を。敵の戦艦部隊は、確かに強力だ。だが、海賊島の奮戦により、その数は開戦時の7割程にまで打ち減らされていた。ここを踏ん張れば、あの巨大要塞群を駆逐した海賊島と、再度共闘できる筈。集注砲火を浴びつつも、絶え間なく火線を放つクイーン・エメラルダス号≠フ背後で、宇宙空間が白い光に満たされて行く。海賊島が指向可能な全砲門を、自動惑星ゴルバの群れに向かって一斉射撃したのだ。
海賊島が装備しているパルサーカノンは、アルカディア号≠フ主砲とほぼ同型の物である。稼動中の砲は90門近い。その内の、ゴルバ達に指向可能な約半数の砲門が、一斉射撃を三連射。そして、複数の火線が集合した光り輝く赤白色の巨大な光弾が、一列に並んで向かってくる黒い集団の先頭艦に連続して着弾した。激しい閃光が迸る。海賊島の誰もが、敵艦に大ダメージを与えた事を確信した。だが次の瞬間、ハーロックは目を瞠った。命中したエネルギーブレットは、ゴルバの表面で弾かれ、四方に飛散って宙に消える。あの強力なパルサーカノンの斉射が、敵の巨大要塞に打撃を与える事が出来ない。アルカディア号のブリッジは騒然となった。ヤッタランの叫び声に、驚愕が滲み出ていた。
「キャプテン、あいつパルサーカノンを受け付けん!全部弾きよったで!?どうなっとるんや?」
「敵要塞の周囲に、不自然な空間の歪みが確認されました。これは物凄い出力の偏向バリアです!」
螢の報告も悲鳴に近い。そしてその間にも、敵は猛スピードで接近を続けているのだ。
あれ程の集中砲火を無効化してしまうとは、凄まじいシールドだ。もっと接近して攻撃すれば、効果があるだろうか?だが、それは諸刃の剣だ。奴らの攻撃力は、果して如何程の物なのだ?
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