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苦境

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ハーロックの思考が次の行動とリスクを考える間に、ゴルバ達の隊列が連続して発砲を開始した。強力な光の束が次々と海賊島に着弾する。その衝撃で、要塞島は大きく揺れ動いた。
「キャプテン、敵の攻撃で此方のシールドが・・・!中和率、さらに8パーセント低下しました。こんなのを続けて喰らったら、シールドが持たない!あの主砲は、従来の狙撃戦艦の比ではありません!」
「怯むな!副長、砲撃を続けるのだ。機関室、魔地機関長。重力エンジンの出力を上げろ!余剰エネルギーをシールドの維持に回せ。螢、重力波ミサイル発射準備。エネルギー弾が駄目なら、実弾をお見舞いするのだ!」
ハーロックが大声で命令する。その声に応えるように、海賊島の砲門は唸りを上げて光弾を放った。高速で接近を続けるゴルバ群との距離は、既に30宇宙キロを切っている。宇宙戦艦の砲戦距離としては、至近距離と言って良かった。そして発射された火線は、全て狙い違わず敵隊列の先頭に刺さったかに見えた。
「駄目や!この距離でも全部弾かれとるで!化けモンや、あいつら!!」
ヤッタランの報告には焦燥感がありありと感じられる。この距離で打ち抜けないシールドの存在が、俄には信じられない様子だ。
ハーロック達の危機は、エメラルダスにもすぐに理解出来ていた。あれだけのパルサーカノンが無力化されてしまうとは、恐るべき防御力だ。だが、今の彼女には成す術が無かった。宇宙最強の一隻と謳われるクイーン・エメラルダス号≠ニはいえ、今は多数の敵戦艦と砲火を交えている最中なのだ。とても援護に回る余裕は無かった。いや、それが可能だとしても、あの巨大要塞に有効な攻撃を行えるのか。エメラルダスの心は苦い思いで満たされていた。そう、あのヤマト≠フ攻撃。あれは実弾による射撃だった事はわかっている。ハーロックが言っていたように、実弾ならば、あの偏向シールドに対して有効な打撃を与える事が可能かもしれない。あの艦を分派してしまったのは、不用意な判断だったかもしれない。油断があったのかもしれない。
目前の戦闘に忙殺されつつも、彼女は唇を強く噛まずにはいられなかった。何とかせねばならない。だが、今の自分にはその手段が無い。プライド云々を言っている場合ではなかった。彼女は決意すると、通信機のパネルを操作した。
「此方はクイーン・エメラルダス。ヤマト、古代!応答してください。」

アルカディア号≠ニクイーン・エメラルダス号≠ヘ、かってない苦境に立たされていた。機械化帝国の新兵器と物量が、容赦なく彼等を締め上げる。ヤマト≠ヘ、救世主足り得るのだろうか。彼女は果して間に合うのか。戦況は二転三転し、混迷の度合いはさらに加速してゆくのだった。


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作者: 戦舟
投稿日:2011年12月18日(日) 05時20分30秒
BYTE数:11 KB (5812字)

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