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深い海の底から、海面を見上げているようだ。意識が在るのか無いのかも、よく判らない不思議な感覚だ。私はもう死んでいるのだろうか?不意に誰かが私に語り掛けた。女の声だ。
『もうすぐ、あなたの命は尽きます。何か思い残す事はないですか?』  
そうか、やはり私は・・・。
「私は映画を創っている。しかしまだ未完成なんだ。このまま死ぬわけにはいかない。」
『残念ですが、生き続けて望みを叶える事はもう出来ません。しかし、あなたの映画はまだ死なないでしょう。沢山の人がきっと生かし続けてくれます。』
辺りは真っ暗になった。色々な思いが脳裏を過ぎる。そうだな、あの絵描きとは、仲直りしておけばよかった。とか、皆を喜ばせようと思った映画ではあったが、連作なら整合性にもっと気を配ればよかったかな。とか、深く考えるわけでもなく、ただ思っていた。
遠くから霧笛が聞こえる。船がだんだん近づいてくるようだ。あの船は・・・。特徴的な球状艦首 優美なラインの甲板 三連の主砲塔 天守閣の如き司令塔 そうだ、おまえは私の夢だった。そしてこれからも・・・

意識は奈落へと落ち、途絶えた



作者: 戦舟
投稿日:2011年01月09日(日) 03時07分10秒
BYTE数:1 KB (469字)

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