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混乱

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彼は確かに言った。『伝説の宇宙戦艦、ヤマト=xと・・・?キャプテン・ハーロックと名乗るあの男は、ヤマト≠フ事を知っている?だが、伝説とはどういう事なのだ?やはり暗黒星団帝国の罠なのか?
いずれにせよ、俺に出来るのは対話する事しかない。何等かの意図が彼らにあるならば、それが善意であれ悪意であれ、言葉を交わす事で知れてくるに違いない。とにかく、いきなり血を流すのだけは願い下げだ。
古代進は背筋を伸ばし、スクリーンの男の隻眼を見る。その眼光には、強い意志が宿っているのが感じられた。
「キャプテン・ハーロック。こちらは地球防衛軍所属、宇宙戦艦ヤマト。私は艦長代理、古代進。現在の本艦の最先任者として、指揮を執っています。先程は偶発的に暗黒星団帝国♀ヘ隊との戦闘に巻き込まれ、止むを得ず防衛の為に実力行使に及びましたが、武力をもって事の解決にあたるのは本艦の、いや、地球連邦の本意とする所ではありません。そちらの所属される国家、組織がどういった物なのか、我々は存じません。しかし、我々に侵略的な意図はありません。誤って砲火を交える事の無い様、こちらと協議をお願いしたい。」

ハーロックは、古代の言葉を聞きながら、ヤマト≠フ現状について推測していた。
ヤマト≠フ若い指揮官。彼の言動から察するに、あの艦が何等かの意図をもって、その超技術で時間旅行を行った、という事ではないらしい。遥かな時間を超えて、今この場所に存在している、という自覚すら無いようだ。
故に、こちらの素性や状況を、彼らは一切知らないと思われる。我らが戦う理由も、その相手についても。だが暗黒星団帝国≠ニは? 理由は不明だが、どういう訳か彼らは機械化帝国の事をそう呼んでいる。
あの戦艦の正体がヤマト≠装った機械化帝国の罠、という線は無いな。あの艦の戦闘力なら、余計な策を弄する意味などなかろう。殺る気ならとっくにあの強力な主砲をこっちに向けている。
何よりも、古代 進=B彼の発する言葉を、俺はまったく疑おうという気になれない。理由を問われればはっきりとは答えられないが、あの男は信頼に値する。トチローにまた野生のカン≠ニ揶揄されそうだ。
そこまで考えると、ハーロックは古代の呼びかけには答えず、まったく違った話題を口にした。
「古代、少々質問させてもらいたい。現在の地球は機械化帝国、君らが暗黒星団帝国≠ニ呼んでいる輩に牛耳られており、地球防衛軍などという組織は存在しない。そして、俺の知る限りヤマト≠ェ母なる地球を守る為に戦没してから、既に800年近い年月が経っている。何故、古の大戦艦が、今ここに存在しているのだ? 
その艦から検出される、タキオン粒子を用いた機関のエネルギー反応。我々にとってはロストテクノロジーである波動エンジン≠、君達の艦は搭載している。この事実がなければ、その戦艦がヤマト≠セというのは、到底信じる事が出来ない、途方もない話だ。・・・君達はどうやって時間の流れを乗り越えてやって来た?この西暦2970年に!?」

対話を始めて僅か5分、キャプテン・ハーロックとの会談は一時中断となっていた。ヤマトの第一艦橋は混乱していた。『ヤマトが戦没して800年近い』『西暦2970年』『時間の流れを乗り越えてやって来た』
思いもよらなかった言葉が一同を混乱させ、猜疑心を呼び起こす。一体どういう事なんだ?まるであの偽地球で騙されかけた時と同じ状況だ。到底信じる事など出来ない。皆がそう感じていた。だが、古代進は少し違っていた。到底信じる事など出来ないと思いながらも、隻眼の漢が話す言葉の力に、心が揺さぶられていた。ハーロックの話に嘘は無いのだと、彼の直感は囁く。
古代は頭を一振りすると、自分自身に心の中で活を入れた。検証もせずに相手の言葉を鵜呑みにする訳にもいくまい。もしこれが暗黒星団帝国の罠だとしたら、南部の奴に野生のカン≠ニからかわれるだけじゃ済まない失態だ。


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