■一覧に戻る
■ページ指定
■感想を見る・書く


共同戦線

  [→]  【PAGE 1/4】


鮮やかな噴射炎を煌かせ、後方から迫るヤマト=Bビデオパネルに映し出されるその勇姿を見ながら、ハーロックはこの後で待っている戦闘の展開を考えていた。
狙撃戦艦部隊と巡航戦艦部隊は、アルカディア号と海賊島≠ナ迎撃、水雷戦隊をエメラルダスとヤマト≠ノ任せる。問題は敵の航空戦力。空母が何処かに隠れて、こちらを窺っているのは間違いない。偵察機を出して索敵を行なうにしても、スペースウルフ隊は、台場機以外はセミオートの自動操縦機だ。やはり隠密偵察には有人機が必要だな。どうする?
暫しの思考の後、ハーロックは結論する。其処の所は伝説の宇宙戦艦≠ノお願いしてみるか。

ヤマトは波動エンジンを全開にし、通常空間で行ない得る、最大の加速を行なっていた。アルカディア号とクイーンエメラルダス号に追いつき、その隊列に加わらんとする、正にその時だった。
「後方5宇宙キロに時空震を確認!これは、でかい!巨大な何かがワープアウトしてきた模様、接近して来ます!ビデオパネル、拡大投影!」
太田が大声で報告する。次の瞬間、ヤマト第一艦橋の一同は、ビデオパネルに映し出された物体の姿に驚愕していた。あれはなんだ!?小惑星なのか?あんな物が、どうしてワープしてくるんだ!?
一同が呆気に取られる中、古代はいち早くショックから抜け出していた。彼は思う。兎に角、あのでかブツの接近を阻止せねば。転舵して全砲塔を指向させる時間は無い!
「南部!三番主砲塔、二番副砲塔、艦尾魚雷発射管、咄嗟射撃だ!準備出来次第、ともかく撃て!」
「りょ、了解!三番主砲塔、二番副砲塔、発射準備!距離はいい、方位を合わせろ!艦尾魚雷発射管、装填急げッ!!」
南部は、眼前にある火器管制システムの、パネル表示を凝視していた。赤色の表示が、次々に緑色へと変わって行く。驚異的なスピードで発射準備は整えられた。そして彼が射撃命令を出す直前、危ういタイミングでキャプテン・ハーロックの姿がビデオパネルに現われた。
「待ってくれ、ヤマトの諸君。攻撃はご遠慮願おう。時間が無いので手短に話すが、ワープしてきたのは敵ではない。小惑星を改造した、宇宙海賊の秘密基地だ。我々は海賊島≠ニ呼んでいる。宇宙要塞としての機能も持っているので、こちらの手駒として呼び寄せたのだ。」

ビデオパネルに映された巨大な岩隗を観察しながら、真田技師長は内心で感嘆の声をあげていた。
あんな巨大な物体が、制御された状態でワープしてくるとは。凄い出力と精度のワープ機関だ。あれが未来の人類が持つ科学技術≠ゥ・・・ この800年先の未来世界で、果してヤマトの力は通用するのだろうか?
そんな真田の考えを見透かすかのように、古代が話し掛けてきた。
「真田さん。先の戦闘で、波動カートリッジ弾やコスモ三式弾が発揮した威力を考えると、やはり機械化帝国≠ヘ暗黒星団帝国≠サの物の未来の姿か、或いはそのテクノロジーに多大な影響を受けている未来の星間国家だと思います。暗黒星団帝国≠フ科学技術は、波動エネルギーに対して極端に脆弱。この特徴を引き継いでいるようですからね。それならば、たとえ此処が800年先の未来世界であっても、ヤマトの力は充分に通用するはずです。そう思いませんか?」
真田は、古代の精神が、既に戦闘モードでフル回転している事を知った。この状態の彼は、普段の優しげな青年とは別人だ。しかし、単なる猪武者というのではない。他人には気取られないつもりでいた、俺の内心の不安すら、今の彼は洞察してみせた。俺以外のクルーに対しては、ヤマトの打撃力の優位性を説いて安心感を持たせた。そして俺に対しては、『周りに不安を感づかれぬよう注意しろ』、と釘を刺したという事だ。指揮官古代進≠フ鋭さと厳しさに、真田は苦笑した。


  [→]  【PAGE 1/4】



■感想を見る・書く
■ページ指定
■一覧に戻る