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勇戦

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「貴方がヤマト≠フ指揮官、古代 進ですね?私はエメラルダス。このクイーン・エメラルダス号の主。ハーロック達が敵の戦艦部隊を引き付けている間に、私達は小魚共を始末せねばなりません。あまり時間は掛けられない。私は愚図な男共には、我慢がならない女です。先程までの勇戦がマグレでない事を願っていますよ。」
その美しい女海賊は、ビデオパネルの向こうから怜悧な視線を投げかける。まるでそこに居並ぶ男達を、値踏みするかのように。
ヤマトの第一艦橋は、毒気を抜かれた男達の戸惑いで一杯だ。彼らは思う。スターシアやサーシア、テレサ、メラやジュラ。今まで出会った宇宙の女神達とは雰囲気こそ違うが、エメラルダスの美しさは彼女等に勝るとも劣らない。顔の傷跡すら、その美貌を引き立てるアクセサリーのようだ。
だがこの男だけは、そんな女の武器にも揺るがない。彼の女神は、地球で待っているあの美しい彼女(ひと)だけだ。古代 進は、エメラルダスの視線を真っ向から受け止め、その瞳を見つめ返す。一瞬、そこに稲妻が走ったかのように緊張感が漲る。そして女海賊は、満足げに微笑んだ。
キャプテン・ハーロック。直感の塊のような男。貴方の人物眼は確かですね。私もこの坊や、気に入ったわ。
エメラルダスはつい先刻、ハーロックと交わした会話を思い出していた。彼はこう言った。

「エメラルダス、ヤマト≠守ってくれ。先程の戦闘から察するにヤマト≠フ時代には、まだエネルギー干渉による間接防御、バリアシステムは実用化されていなかったようだ。直接的な装甲防御のみがヤマト≠フ持つ防御力だ。打たれ強さという部分に限って言えば、ヤマト≠ヘアルカディア号やクイーン・エメラルダス号に劣っていると思う。だが、あの攻撃力。波動エンジン、波動エネルギーのもたらす破壊力こそが、機械化帝国打倒のカギだ。プロメシュームが恐れているのも、正しくそれだ。ヤマト≠失ってはならん。俺達は海賊島≠ナ敵戦艦部隊を引き付ける。クイーンエメラルダス号はヤマト≠ニ共に水雷戦隊を殲滅しつつ、敵機動部隊を探し出して攻撃してくれ。」

エメラルダスの微笑みは、思い出し笑いへと変わっていた。ハーロック、簡単に言ってくれるわね。小魚とはいえ地球産のピラニア程度には凶暴、それも結構な数ですよ?しかも空母まで探し出せとは、このクイーン・エメラルダス号を家政婦とでも思っているのかしら?まあ、そちらも楽をしている訳ではなさそうだし、トチローも貴方と一緒に頑張っているのだから、我慢してあげるけれども。
 
「エメラルダス。私達は、機械化帝国の艦隊との戦闘経験が乏しい。偶発的な戦闘を一回行なったのみです。私達は、奴らとの戦闘を豊富に経験している、貴女方の指揮下で戦うのが妥当だと思うのですが?」
エメラルダスの笑みに訝しげな視線を注ぎながら、古代が訊ねてきた。束の間、記憶を遡り揺蕩っていた彼女の心は、現実に引き戻される。
「古代、左翼の敵水雷戦隊に先制攻撃をお願いします。そちらの主砲は射程が長い。アウトレンジ攻撃が可能でしょう。先程の戦闘で、攻撃機の邀撃に使った散弾。ある程度接近されても、相手が装甲の薄い駆逐艦なら、あれも効果が期待できます。敵は魚雷による飽和攻撃を目論んでいます。魚雷の射程距離に捕らえられる前に、奴らの数を減らさなければ、手痛い目に会います。右翼の連中の侵攻は、クイーン・エメラルダス号が阻止します。ヤマト≠ヘ攻撃に専念して下さい。機動部隊の索敵は、貴方がたにお任せします。周辺宙域のデーターは、アルカディア号から受け取っていますね?」
古代はエメラレダスの言葉に黙って頷く。そして命令を発した。
「島、取舵60度、出力全開。速度、最大戦速から一杯へ!南部、各砲塔個別射撃。目標選定は任せる。出来る限り多くの敵艦を目標にしろ。転舵終了と同時に全主砲塔、波動カートリッジ弾撃ち方始め!」


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