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ファイター・パイロット

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古代進は、艦載機格納庫へと急いでいた。先程から、格納庫の待機室との連絡が取れないのだ。砲撃戦の指揮は南部に任せておけば良い。他に緊急を要する案件が、まだ彼には残されていた。それにはコスモタイガー隊が不可欠なのだが・・・。古代は格納庫に飛び込むと叫んだ。
「加藤、どうした?どうして艦内通話に応答しないんだ?各飛行小隊のリーダーを集めてくれ!・・・おい?お前達、何をしている!?」
古代が声を荒げる。其処には人だかりが出来ていた。待機室は空っぽの状態だ。
格納庫の中央に、コスモタイガーUとも、コスモゼロとも様相の異なる機体が鎮座している。物見高いパイロット連中が、幾重にも取り囲んで興味深げにそれを観察中だ。宇宙戦闘機SW−190スペースウルフ=Bアルカディア号からやってきた艦載機だ。古代は人込みを掻き分けながらその機体に近付き、そして怒鳴る。
「お前達、戦闘中だぞ!持ち場に戻れ!今すぐスクランブルって事態も有り得るんだぞ!あ、加藤、この野郎お前まで!」
野次馬根性丸出しの搭乗員達の中に、コスモタイガーチーム隊長、加藤四郎の姿を発見した古代は、思わず頭を抱え大きなため息をついた。古代に名指しされた加藤は、冷や汗を垂らしつつ、古代の前で直立不動の体制をとった。
「も、申し訳ありません!あまりに興味深い機体だったので、つい・・・。」
艦長代理は不気味にニヤつきながら加藤をジロリと睨む。加藤四郎の顔面は、まるで鏡の前の蝦蟇蛙のように脂汗びっしょりだ。
「加藤、覚悟しとけよ。後でお仕置きだからな。各小隊長はガンルームへ集合、他の搭乗員はスタンバっておけ!」
古代はふと気が付く。スペースウルフ≠フ隣で、ポカンとした様子でこちらを見ている少年がいた。
あちゃ!無様な所を来客に見せちまったな。艦内の規律を疑われちまうよ、まったく。
彼は心中で愚痴りながら、少年に歩み寄った。
「君が台場正′N、アルカディア号の艦載機隊指揮官ですね。自分は古代進。ヤマトの艦長代理を務めています。」
「は、はい。自分が台場です。キャプテンから、こちらの指揮下に入るよう命ぜられています。宜しくお願いします!他のスペースウルフ≠ヘ、ご存知の通り無人機ですので、現在は敵の砲撃を避けつつヤマト≠フ周囲を編隊で旋回、待機させています。」
自己紹介しながら台場は思う。
正規軍の宇宙戦艦だというから、どんな堅苦しい所かと思っていたのに、この雰囲気は・・・。アルカディア号と大差ないような気がする。強い戦艦ってのは、案外何処でもこんな感じなのか?この艦の指揮官、古代という人も、思っていたよりずっと若い。コスモタイガー隊の人達も皆、俺と大差ない年齢に見える。何か拍子抜けしちゃうな。

戦場からそれ程遠くはない、小惑星と暗黒ガス雲が点在する空間の中に、ひっそりと黒色の艨艟達が寄り集まり、牙を研いでいた。機械化帝国の空母機動部隊である。彼女等の恐るべき航空打撃力が存分に発揮されれば、ヤマトやアルカディア号、クイーン・エメラルダス号達が危機的状況に陥る事は明白であった。圧倒的な数の力による飽和攻撃。寡兵が抗うのは困難な戦法だ。人に群がる軍隊蟻の如き惨状となるであろう。宇宙の海における戦いでも、制空権は重要な要素だ。
航空母艦達の周囲は暗黒ガスに覆われ、視界は悪かった。美しい宇宙を楽しむなどという環境からは程遠い状況だ。機動部隊を指揮するその男は、椅子に深く腰を降ろし、長く待たされる時間を持て余している風だった。仕方なく彼は、遠い昔の出来事を回想し、退屈を紛らわせていた。

そう、辺境の島宇宙の、とある太陽系にあの惑星はあった。滅亡寸前の二重惑星。既に知的生命体の姿など殆ど無く、僅かに星系を統治してきた王族の生き残りが数名、双子星の片方にひっそりと暮らしていた。そこは歳老いた滅び行く星系だったのだ。有用な資源を求め、遠く他の銀河へと旅を重ねる我が帝国は、そこに素晴らしい資源を発見した。双子星の地下に眠るエネルギー鉱石だ。私達は喜び勇んで、その惑星の統治者との交渉に臨んだ。だが、統治者である女王は、採掘を頑として拒んだのだ。当初は紳士的に事に当ろうと腐心した我らも、遂には忍耐の限界に達した。実力行使に及ばんとした、まさにその時。女王は破滅への道を選んだ。彼女らは、辱めよりは死を選ぶ、蔑まれて生き続けるのを良しとしない人種だったのだ。碧く美しい惑星は、粉微塵に吹き飛んだ。そして、その惑星を崩壊させたエネルギーは、我々の想像を越える破壊力を持っていた。爆発の直撃を受けた我らの艦隊は大打撃を受け、資源探しの遠征どころではなくなってしまった。これが恐るべき破壊をもたらす、波動エネルギー≠ニの最初の遭遇だった。


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