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奇襲攻撃

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加藤達の操るコスモタイガーUは小惑星の陰から飛び出し、黒色機動部隊の旗艦に向かってフル加速した。
「古屋、チャフ散布開始、デコイはそのまま敵艦隊の真ん中を突っ切らせて、適当な所で他の空母にぶつけちまえ!俺達はこのまま旗艦の飛行甲板を叩く!とにかく、敵艦載機の発進を阻止するぞ!」
「了解!最初の一撃ば成功させなくては。電波妨害が有効なのは、せいぜい5分くらいだと思うね。急げ、隊長!」

「攻撃機部隊、発艦準備宜し。α、β、γ各小隊は所定位置に付け。カタパルト射出準備。」
「配下の各母艦、艦載機の発艦準備完了。攻撃隊発進3分前。」
黒色機動部隊の攻撃準備は着々と整っていた。ハードギアは、相変わらず不機嫌そうな様子で報告を聞いていた。
まったく退屈な戦いだ。あんな反乱分子どもを遊ばせておくから、増長する奴らが増える。女王が何を躊躇していたのかは分からんが、もっと早い時期に全力で叩いておけば良かったのだ。確かに連中の戦艦は、個艦の戦闘力としては中々大した物だ。だがその数は知れている。物量で押し切ってしまえば殲滅出来るモノを何故、今まで放っておいたのだろうか?
彼の心中には、機動部隊の空襲で宇宙海賊達を叩きのめすという作戦が、失敗する可能性は微塵も無かった。それ程に自分の艦隊の攻撃力に絶大な自信を抱いていたのだ。そして、自分達が攻撃を受ける可能性についても、やはり考える事は無かった。そして順調に進行すると思われた作戦の発動直前に、波乱は起こった。
「ハ、ハードギア様!僚艦との通信、途絶!強力なジャミングを確認しました。こ、これは・・・!」
「レーダー、ホワイトアウト!正体不明の電波障害。機能不全発生直前に、複数の機影らしき物が!」
ハードギアは立ち上がると大声で吼えた。
「うろたえるな!電子防護、急げ。通信とレーダーを回復させろ、急ぐのだ!」
その刹那、窓外で紅蓮の炎が上がり、強烈な爆発の振動が艦を揺るがした。明灰色の機体が、その機首に鮮やかな機関砲の発射炎を煌めかせながら、機械化人達の眼前をローパスして行く。束の間、彼等は呆然とその有様を眺めていた。飛行甲板に駐機している爆装した攻撃機は、機関砲の掃射を受けて次々に爆発、そして搭載していたミサイルが誘爆を起こし始めていた。
「敵襲!甲板の攻撃機が誘爆しています。このままでは危険です!昇降エレベーターを閉鎖、防火シャッター降ろせ!消火システム、作動急げ!」
「レーダー、依然使用不能です!敵機の数、確認できません!対空砲も照準不能です!」
ハードギアは唸り声のようなの呪詛の言葉を唇から漏らしながら、燃え上がる攻撃機を凝視した。しかしながら彼が禍々しい言葉を向ける対象は、敵機ではなく自軍の指揮官、ファウストその人であった。
何たる事だ。敵にECM(電子妨害戦)を仕掛けられ、先手を取られるとは。圧倒的航空優勢下で、こんな事など有り得ないはずなのに。海賊どもが有力な攻撃機部隊を保有しているという情報など、聞いておらんぞ。確か新手の戦艦が一隻、奴らに合流したとか言ってはおったが・・・。ファウストの奴、敵の新手に空母がいる事を、私に隠していたのだな?そうまでして俺を陥れたいのか。何たる卑劣漢なのだ、あの男は!
自分の過失は認めず、ただひたすらに味方を呪う指揮官の様子を、部下達は凍り付いたかのように見つめていた。爆炎の照り返しを受け、ハードギアの狂態は幽鬼の如く浮かび上がって見えた。

加藤四郎は、周囲の状況を注意深く確認していた。自分が銃撃した旗艦らしい大型空母が1隻、そしてデコイを無理やりミサイル代わりに叩きつけた他の空母が2隻、火災を起こしている。だが、残り9隻の空母と、護衛艦群は無傷だ。良く訓練された兵士なら、そろそろ最初の混乱から立ち直る筈。彼がそこまで考えた時、後席から大声が聞こえた。


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