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苦境

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「第22、第40パルサーカノン砲台、大破!全体火力は、82%まで低下しよったで!補修が追いつかん!」
「敵狙撃戦艦、前面に突出していた5隻が後退します!替わって後列にいた5隻が前面に出てきます!シールドのエネルギー中和率が80%を切ります!このままでは、エネルギーコンデンサーが持ちません!」
ヤッタランや螢の悲鳴じみた報告を聞きながら、キャプテン・ハーロックはブリッジの中央に腕を組んで仁王立ちしていた。特に変わった戦術を指示する訳でもなく、正面から敵戦艦部隊と殴り合うままにさせている。既にかなりの数の敵艦を撃沈、撃破したが、海賊島の損害も累積しつつあった。機械化帝国艦隊は、戦線を脱落した艦の補充を後衛が素早く行なっており、すぐに手数が減る様子は無い。ハーロック達は息をつく暇を見出せず、消耗戦の一歩手前、という状況を強いられていた。
「キャプテン、ヤマト≠ニクイーン・エメラルダス号≠ェ、敵水雷戦隊を撃破!隊列を解きます!エメラルダスはこちらに向かってくるようです。ヤマト≠ヘ別方向へ転舵しました・・・ワープ反応!速いっ、何て速いワープなの!!」
螢の言葉に、ハーロックは口元をニヤリと歪める。思惑通りの働きを見せる僚友達に対する満足と感謝の現われだ。
こっちが体を張って時間稼ぎしている間に、上手く事を運んでくれているようだな、エメラルダス。そしてヤマト=B
「螢、エメラルダス達の戦果を確認してくれ。彼女が此方に向かってくる以上、問題は無いだろうがな。念の為だ。」
「はい。敵の水雷戦隊は、既に壊走しています。おそらく、六割以上が撃沈、又は撃破。戦意を喪失しての逃走と思われます、作戦的な転進の様子は認められません。ヤマト≠フ行き先は不明です。一体何処へ向かったのかしら?」
「つまりは、機械化人どもは尻尾を巻いて逃げ出したっちゅう事やな?懐に飛び込む前に、クイーン・エメラルダス号≠ニヤマト≠ノタコ殴りにされて降参ちゅう訳や。」
パルサーカノン砲台を忙しく操作しながら、ヤッタランが状況を確認する。ターゲットスコープを睨みつける目付きは厳しいままだが、口元には、笑みが浮かんでいた。
その時、アルカディア号≠フビデオパネルが反応を見せる。螢が操作すると、スクリーンにクイーン・エメラルダスの流麗な姿が現われた。
「ハーロック、敵水雷戦隊の駆除は終了した。ヤマト≠フ艦載機隊とスペースウルフ隊による、敵機動部隊への奇襲も成功。ヤマト≠ヘ、敵空母に止めを刺す為に転進したわ。私はこのまま、そちらの援護に向かいます。」
アルカディア号≠フ艦内が歓声に沸く。海賊船の乗組員達は、苦しい状況が報われ、戦況を逆転できる手応えを感じていた。

確かに戦場の空気が変わりつつあった。海賊島の正面で隊列を組み、その宇宙要塞へと集中砲火を向けている黒い鋼鉄の獣達。その後方から、スマートなシルエットの宇宙戦艦が急速に接近していた。飛行船を模した彼女の艦体。その全てから破壊の炎を撒き散らす様子は、恐ろしくも美しい。クイーン・エメラルダス号≠ノよる攻撃は、全ての注意を海賊島へと向けていた機械化帝国の戦艦部隊に、奇襲を受けたに等しい衝撃を与えていた。突然の攻撃に反応できず、その隊列は後方から徐々に切り崩されていた。
「水雷戦隊は、空間魚雷の射程に入る前にすり潰されてしまったな。クイーン・エメラルダス号≠フ速射能力には相変わらず脱帽するが、それよりも今回はあの戦艦だ。あの一発あたりの破壊力はあまりに危険だ。」
戦況を遠望しながら、黒衣の男は一人ごちた。数の力で海賊島を絡め取ろうと画策したが、腹背から圧力を受けては対応出来んかもしれんな。我が配下達はどうにも突発的な状況に弱い。想定通りの状況ならば、一糸乱れぬ洗練された艦隊運動を行えるのだが。此処は新たな命令を与え、建て直しを計らねばならん。


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