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宇宙に抱かれて見る夢は・・・

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「古代!これは、刷り込み現象だよ。」
「すりこ木?」
「す・り・こ・み!!いいか、アヒルは卵から孵った時に、一番最初に目に入った動くものを親と認識して付いていく。そういうのをインプリンティング、刷り込みと言うんだ。」
「じゃあ、一番最初に目に入った島を、親と勘違いしてるって事ですか?」
「親かどうかはともかく、庇護者だとは思ってるんじゃないのか。」
真田と古代は、同じ所へ目を向けた。

「おい!なんとかしてくれ!」
そこには、子供にじゃれつかれて困惑している島の姿があった。

第一艦橋で、古代は足を投げ出しくつろいでいた。
「ねえ、真田さん。結局、あの子はなんなんでしょうね?いわゆる宇宙人なんでしょうけど・・・」
「わからんなあ!抱きつかれた島に異常は無かったし、本人も元気そうだし、地球人との接触においては、問題は無さそうだが・・・」

「あったら困りますよ!」
ドアが開いて、島が姿を現した。
「よお、島!あの子はどうした?」
古代の問い掛けに、島は自分の腰のあたりを指差した。
子供の顔が覗いている。
「つれてきたのか!ダメじゃないか!」
「仕方ないだろう、離れないんだから!」
「島さん、すっかりなつかれてますね。」からかうように相原が言う。
「島さんのどこが気にいったんだろうな?」南部が不思議そうに言った。
「あのなぁ・・・」
島が反論しようとした時、
「シー・マー」
子供が島の制服を引っ張りながら、声をあげた。
「おい、今、島って言ったぞ!」
古代が驚いて立ち上がった。
「ギィー、シー・・・マー」子供が続ける。
「みんなが、島・島って声をかけるから覚えたんだろう。なっ!」
「ギィー!」
島の問い掛けに、その子はうれしそうに答えた。
「じゃあ、古代って言ってみろよ。こ・だ・い!」
「ギギィー・・・」
「古代は難しいだろう。真田ならどうだ。さ・な・だ!」
「ギィ、ギギィー」
その子は困惑したように、島にしがみついた。
「やめてください!びっくりしてるじゃないですか。なあー!」
島が子供を抱き上げた。
「シーマー。ギィー」
子供は、うれしそうだ。
「で、島さん。その子はなんて名前なんですか?」
相原の問い掛けに、島と古代は顔を見合わせた。お互い考えもしなかったという顔だ。
そんな二人を面白そうに見やりながら、真田が言った。
「島、名前をつけてやったらどうだ。」
「僕が、ですか?」
「そうだ、庇護者だろう」
「う〜ん・・」考え込む島。
「ギギー。シーマー。ギギィ」
島の髪をいじって遊び始める子供。
頭を振って島は言った。
「ギィ!ギィってのはどうです。」
「そのままじゃないか!」
「いいだろう。本人も、自分の名前なら言える事になるんだし」
古代の非難に、島が口をとがらせた。
「いいんじゃないか。本人も文句は言わんだろう」真田が二人をとりなす。
「よ〜し!ギィ!君の名前はギィだ。」
みんなが取り囲むなか、島はギィと名づけた子供をかかえなおした。

「あのう、島さん・・」
遠慮がちに、太田が口をはさんだ。
「もうすぐ、小天体群に接近しますが。」
「そうか!じゃあ、この子を医務室にでも預けて来るよ。さっ、ギィ、佐渡先生のところでおとなしくしてるんだ。わかるな!」

ギィを抱えた島が、第一艦橋から出て行った後。
「なんか、島さん、笑ってましたね!」うれしそうに相原が言った。
「うん、そう見えた。」南部が相槌を打つ。
「テレサの事があってから、どこか元気が無いようだったんだが・・・」古代がつぶやいた。
「良かったな、古代!」真田が古代の肩を叩いた。
「はい!!」
「もっと、いろいろ、坂本に拾ってこさせたらどうです?」面白そうに太田が言う。
「バカッ!!ヤマトを託児所にするつもりか!」
「それもそうだ!」
第1艦橋に笑い声が響いた。

「自動操縦、解除!」
島は操縦桿を握り直した。
「小天体群まで、あと200宇宙km!」


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