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宇宙に抱かれて見る夢は・・・
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太田の読み上げに、軽くうなづく。この障害物を回避したら、すぐワープに入る予定だった。
「島、任せたぞ。」
古代の声は、案外気楽そうだ。
「小天体群、突入。面舵30度。エンジン出力そのまま・・・」
ヤマトは、小天体を右へ左へ上へ下へと抜けていった。
「今日は、よう揺れるのう。ひっく!」
茶碗酒をこぼさぬように口元に持っていきながら、佐渡先生が一人ごちた。
いつもなら、付き合ってくれるはずのアナライザーも、森雪が搭乗していない今回は、その代わりとして第1艦橋に詰めている。
今、医務室には、佐渡先生とミー君とギィがいるだけだ。
突然、ギィが立ち上がり、医務室から出て行こうとした。
「こりゃ、ギィ。どこへ行く・・・うわぁ・」
ヤマトが大きく揺れる。
佐渡先生は、よろけた瞬間、転がっていた酒瓶に足を取られ、運悪く壁に頭を打ち付け、そのまま気を失ってしまったのである。
ミー君は、こぼれたお酒を舐めていた。
「みゃあ〜・・・ひっく・・」
「まもなく、小天体群から離脱します。」太田がパネルを見つめて言う。
「よし、ワープの準備だ。島」
古代の指揮に、島はすぐ答えた。
「ワープ5分前!波動エンジン出力最大!」
「了解、エンジン出力上昇!」
山崎機関長が、機関室に指令を送る。
「ワープ3分前!エンジン出力・・・んっ?
機関長、エンジン出力が全然上がってないじゃないですか!!」
島が山崎を振り返った。
「そんなはずは・・・?」
が、確かに目の前の出力表示は80%のまま、いや、見ているうちに75%と落ち込み始めた。
「機関室!!徳川、どうした!何かトラブルか?」
山崎は機関室の徳川太助を呼び出した。
「ええっ!?出力が上がらないですって?こっちには何の異常もありませんよ。問題無しです。」
「な、わけないだろう。出力が落ち始めているんだ!このままじゃ、ワープに入れませんよ!!」
島は、声を荒げた。
「落ち着けよ、島。真田さん、原因わかりませんか?」
古代が、真田に問い掛ける。
「今、探っている。う〜ん!エネルギー漏れをおこすような故障個所は見当たらんな。」
「山崎さん、何か見つかりませんか?」今度は、山崎に聞いた。
「1からチェックを掛け直しているんだが、手順にも、エンジン自体にもこれと言った異常は見つからん。」
「島、操縦に問題は・・・」
「ない!!!」
「ワープ、1分前・・・ですが・・・?」
太田が恐る恐る言った。
「仕方がない。ワープは中止だ!」
古代の言葉に、島はレバーをゆっくりと戻した。(*2)
「島、すぐに医務室に来てくれんか!」
切羽詰ったような佐渡先生の声が第1艦橋に届いたのは、エンジントラブルの原因を、一通りチェックしなおし終えた時だった。結果は、原因不明!誰もが、狐につままれたような気分でいたところだ。
「ちょっと待ってください。今、手が離せないんです。」
島が、少しイラついた声で返事をした。
「こっちも、大変なんじゃ、ギィが・・・こりゃ騒ぐな!・・・とにかく、一度見に来い!」
佐渡先生の声が、一回り大きくなっていく。
「島、とりあえず、行って来いよ。」
「そうだな、何度調べなおしてもトラブルの原因は見つからんのだ。少し、頭を冷やした方がいいかもしれんな」
古代と真田に、そう言われて、島は渋々席を離れた。
「いったい何なんです。佐渡先生!」
島が医務室に入ると、そこには、困ったような顔をした佐渡先生と、白衣姿の救護班の女性がいた。
(あれっ?救護班にこんな隊員いたっけ??)
と、疑問に思った瞬間・・・
「シーマー!!!」
突然、その隊員が飛びついてきた。
「う・うわぁ!!」驚く島に、うれしそうにしがみついてくる。
「ギィ〜、シ〜マ〜、ギギッ」
「ま、まさか、ギィなのか?」
目をやれば、佐渡先生が大きく頷いている。
確かに、腰まである豊かな髪は、薄い緑色で、瞳は、深い蒼色をたたえていた。だが、つい先程までのギィは、自分の腰までもなかったはずだ。それが、もう一人前の女性の姿で・・・女性・・・なのか?
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