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宇宙に抱かれて見る夢は・・・

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「どういう事です?佐渡先生!」
「どうもこうも、わしにゃぁわからん!目の前で、急にでっかくなりよったんじゃ。慌てて服をきせたんじゃぞ。」
「そんな・・・ギィ、君は女性だったのか?」
しがみつくギィを引き剥がし、全身に目をやる。背は、島の胸あたりまで伸びていた。
「ギィ〜?」
ギィは、不思議そうに首を傾けると、再び島に抱きついてきた。子供の姿をしていた時と変わらぬ仕草で。
「わわっ!ギィ、そんなにしがみつくなって・・・(む、胸が当たるじゃないか・・・汗)」
赤い顔をして困惑している島を見て
「ふむ!やっぱり、島を呼んで正解じゃったな。なかなか面白い反応じゃのう。次は、古代と真田君を呼ぼうかの!」
「みぃ〜!」
すっかり楽しんでいる、佐渡先生とミー君だった。

「それにしても、驚いたよな。ギィのやつ、あんなふうに、急に大きくなるなんて!」
頭をかきながら、古代が言った。
「地球まで連れて帰っていいもんですかね?真田さん?」
「う〜ん!土星のメディカルセンターで、しっかり調べなおしてからの方がいいだろうな。」
「えっ!それって酷い事されませんよね?」
ワープ準備をしていた手を止めて、島が尋ねた。
「俺には、なんとも言えんな。」
真田は腕を組み、視線を上にやった。検査や実験のあれこれに、思いを馳せているのが、第1艦橋にいる誰の目にも明らかだった。
「と、とりあえず、ワープしてからの話だよな。」
真田から視線をはずして、古代が命令を出す。
「島、ワープに入れそうか?」
「エンジンさえ大丈夫なら、こっちは、いつでもOKだ。」
「山崎さん。エンジンの調子は?」
「うむ。出力も戻って安定しているし、今のところ問題は無しだな。」
「よし、今度こそ、太陽系まで一気にワープだ。」
「了解!ワープ開始5分前!頼みますよ、機関長。」
島が山崎に声をかける。
「波動エンジン出力上昇。心配するな、島。順調だ。」
いつもの、エンジンの鼓動が第1艦橋に届き始めた。
「エンジン出力90%・・・95%・・・」
山崎が読み上げる。
その時・・・
「だ、誰だ!!こんな時に、歌を歌っているのは!」
古代が声を荒げた。
確かに、かすかに歌声が聞こえて来る。徐々に大きくなっていくようだ。
「相原、どこかからの通信か?」
「ち、違います。通信機に反応はありませ・・・ん・・・ふあぁ〜・・・」
「あくびだなんて、不謹慎だ・・・ぞ。ん・ん〜む・・・」
注意をしようとした南部も、途中からあくび交じりになってしまった。
「どうして・・・突・然・・こん・な眠・・気が・・・」
太田がモニターに突っ伏した。
「この歌・・だ・。古代、これを聞いちゃあいか・・ん」
「でも、真田・さ・・ん。耳・・を塞い・で・も・・」
古代と島は必死で耳を塞いだ。しかし、その歌声は、頭の中に直接聞こえて来る様だ。
不快ではなかった。むしろ、どこか懐かしく、暖かい旋律で、優しく柔らく包み込まれていくようだった。
もはや、第1艦橋で目を覚ましている者は、誰もいない。アナライザーでさえ、機能を止めていた。
そして、その異変に気づく乗組員は、誰一人としていなかった。機関室で、格納庫で、コンピュータールームで、ありとあらゆる場所で、それぞれが、それぞれの格好で眠りについていたのだ。
島は、操縦席の背にもたれて眠っていた。操縦桿が勝手に動き、ヤマトは、静かに舵を右にきった。

どれくらい時間がたった頃だろう。第1艦橋のドアが、静かに開いた。
現れたのは、ギィ!
「シーマー!」
眠っている島に気づいて、ギィは、慌てて駆け寄った。
「ギィー、シーマー、ギギィーギィー!」
激しく島を揺すりながら、ギィは大声をあげた。
「ギィギィギィー、ギギィー」
島の頭の中に流れていた心地よい歌声が、不協和音に変わった。
「う・う〜ん」
眉をしかめながら、島が目を覚ます。


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