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宇宙に抱かれて見る夢は・・・

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「ギィ、勝手にここへ来たらダメだろ。って!僕は、眠っていたのか?」
やっと、状況を思い出した島は、慌てて隣の古代を揺すり起こそうとした。
「古代、おい、古代!目を覚ませよ!おい!!」
しかし、古代は何の反応も見せない。
ギィが、古代の耳に口を寄せた。
「ギィーーー!!!」
「うわぁー!!」
古代が飛び上がった。
どうやら、ギィの声が効くらしい。
島は、全艦通話のマイクのスイッチを入れた。
「ギィ、これに向かって叫ぶんだ。解るか?声を出すんだ!」
ギィはマイクを渡されると、最初は恐る恐る、そのうち調子に乗って叫び始めた。
「ギィ、ギィ、ギギィーギィー!」
その声は、ヤマト中に響き渡った。

「島、ここはどこだ?」
「古代、目が覚めたか?」
「ああ、すごく気持ち良かったんだけどな!」
「バカッ!そんな事いってる場合か。外を見てみろ!」
メインモニターに映し出されているのは、無数の宇宙船だった。かなり傷んで朽ち果てた物から、ついさっきまで宇宙を航海していたように見える物まで、様々だ。
そのどれもが、自ら動く気配も無く、ただ宇宙空間を漂っているようだった。
「これは、宇宙の墓場だな。」いつの間にか、目を覚ましていた真田が言う。
「古代、このまま、ここにいては危険だぞ!」
古代は大きく頷いた。
「島、すぐに発進だ!」
「了解。補助エンジン始動」
「補助エンジン始動!」山崎も目を覚ましていた。
「座標が表示できません!」太田も起きている。
「コノアタリハ・ツヨイ重力場デ・シハイ・サレテイマス」
機能の戻ったアナライザーが警告する。
「とりあえず、ここから離脱する。ヤマト発進!」
ヤマトが徐々に前進し始めた。その頃には、ギィの声で、ほとんどの乗組員が目を覚ましていた。
「ギィの声を録音しました。これを、繰り返し艦内に流します!」
相原が手早くキーを操作する。
「よし、ギィ!もう叫ばなくていいぞ。」
古代が、ギィの手からマイクを取り上げた。
「よくやったな!ギィ!」
島が片手を伸ばし、ギィの頭をなでた。ギィは、嬉しそうに目を細める。
「メインエンジン始動!出力80%」島が、操縦桿を引いた。
「エンジン出力80%・・・いや、70・・60・・?いかん!出力が落ちてきている!」
山崎が、声をあげた。額に玉のような汗を浮かべていた。
「こんな時に、またですか!!」島の声も、焦っていた。
しかし、前回と同様、どこをどうしてもエンジンの出力は上がらない。
「このまま、この重力場に捕らわれたままでいろって言うのか!真田さん、何か方法は無いんですか?」
必死の形相の古代が、真田を振り返った。真田は黙ったまま、首を振る。
ヤマトが、大変な状況に陥っている事が解るのだろうか、ギィも、また、悲しげな表情で島を見上げた。それを、見つめ返す余裕は、今の島には、無かった。
島の横顔を、じっと見つめていたギィは、突然立ち上がり、古代の前のパネルに手をやった。
「ギィ、触るんじゃない!」
古代が止めようとした時・・・
ギィの体が、突然、緑色の光に包まれた。そして、その光は、パネルから第1艦橋全体へ広がっていった。
「ギィ、何をしてるんだ・・・」
固く目をつむったギィは、島の声にも答える事無く、緑色の光を放ち続ける。
「エ、エンジンが!」山崎が、叫んだ。
「エンジンの出力が、戻ってきている!!」
「なんだって!!!」全員が声を挙げた。
島は、急いで操縦桿を握り直した。
「エンジン出力最大!全速前進!」
ヤマトは、徐々に動き始めた。

「重力圏、離脱!」
「レーダー、復帰シマシタ」
太田とアナライザーの声に、島は額の汗をぬぐった。
「歌声も消えたようです。」相原が、古代を振り返って言う。
「もう、ギィの声、止めましょうか?」
「そうだな。」
古代の指示に、相原は放送を止めた。
気が付けば、ギィの緑色の光が薄くなっている。


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