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宇宙に抱かれて見る夢は・・・
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「ギィ・・・」
島は、席を立って、ギィに近づいた。
と、ほとんど同時に、ギィが崩れるように倒れ込んだ。
「危ない!!」
間一髪、島がギィをその腕に抱きとめる。
ギィは、固く目を閉じ、弱々しい息遣いをしていた。
「どうしたんだ、ギィ!大丈夫か?」
島の問い掛けにも、答える事ができないようだった。
心配して集まった面々が、ギィと島を覗き込む。
「島、これをギィに渡してみろ。」
真田が、島の掌に黒い塊をのせた。物問いたげに真田を見る島を、
「早くしろ!」と、真田は促した。
言われたとおり、島は、ギィの手にそれを握らせた。
一瞬、ギィが緑色に光る。
「・・・ギィ〜・・・」
小さく声を出すと、ギィが薄く目を開けた。
「おおぉ〜!」
周りのみんなが、安堵の声を挙げた。
「ギィ、気が付いたか?」
島が、優しく話し掛けると、ギィは、小さく微笑んだ。
「やはり、そうか!」
真田は、腕を組み深く頷いた。
「どういう事なんです。真田さん」古代が、みんなを代表して説明を求める。
「島、今渡したものがなんだか解るか?」
「レーザー銃のエネルギーカートリッジでしょう!どうして、それをギィに?」
「うむ!どうやらギィは、物質エネルギーを、直接吸収して生きている生物のようだ。」
「???」
「ワープの時、エネルギー出力が落ちただろう。あれは、ギィが、波動エンジンのエネルギーを吸収していたからなんだ。そのエネルギーカートリッジも、空になっているはずだ。」
「ほ、本当だ!」確認した南部が、声をあげる。
「だから、その後、急に成長したと・・・」
「そうだ、古代!そのとおりだ。」
「じゃあ、さっきエンジン出力が上がらなかったのも、ギィが?」
太田の質問に、真田は首を振った。
「それは違うだろう。反対にギィは、自分のエネルギーを放出して、波動エンジンの出力を上げてくれたんじゃないのかな。」
「だから、倒れたんだ!」
島はギィを見つめながらつぶやいた。
「つまり、ギィは、ワープの邪魔をした張本人であり、ヤマトを重力場から脱出させた恩人でもあるって事か。」古代のまとめに、みんなは複雑な表情をしていた。
誰もが言葉を失い、ただ黙ってギィを見つめていた時だった。
「マタ、アノ歌声ガ、ハジマリマシタ!」
「何っ!」相原が、慌てて艦内マイクの前に走った。
「アッ!違ウ!コレハ、違イマス。」
「何が違うんだ?」混乱したようなアナライザーに、古代が声をかけた。
「コノ歌声ニハ、催眠作用ガ、アリマセン。」
その時には、全員の耳に歌声が届いていた。
が、確かに、眠りに誘われるような事は無かった。
「モ・モニターを見てください!」太田が驚愕の声をあげた。
「な・何だ、あれはっ!!」みんなが口々に叫ぶ。
モニターに映っていたのは、女性の姿だった。
もちろん、人間ではありえない。宇宙空間に、一糸まとわず漂っているのだ。
その体は、半透明というか、背後の星の光が透けて見えている。
しかも、一人だけではない。何十という数で、おそらくヤマトを取り巻いているのだろう。
「レーダーニ、反応アリマセン。」
アナライザーが冷静に状況を報告する。
「さ・真田さん。これって!」
「俺にも解らんよ、古代。しかし、どうやら、この歌声は彼女達が出しているようだな。」
みんなが、モニターに釘付けになっていた。
「ギィ、どうしたんだ?」
島の声に、みんなの目がギィに移った。
「ギィ、ギィ、ギィ〜」
ギィは、島の腕の中で、弱々しく両手を前に伸ばしていた。ちょうど、モニターに向かって。
まるで、モニターに映っているものを、掴もうとするかのようだった。
「ギィ〜ギィ〜ギィ〜・・・」その声は、悲しげに聞こえた。
すると、ギィの声に合わせるかのように、歌声が大きくなった。その二つの声は、不思議と調和して聞こえる。
「ギィ、彼女達のところへ行きたいのか?」
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