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宇宙に抱かれて見る夢は・・・

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「おい、坂本たちが妙なものを拾ってきたらしいぞ。」
「妙なものだと?」
ヤマトは、巡回を終えて地球への帰途についていた。後1回のワープで、太陽系に入るという所だ。
島大介は、好奇心を抑えられず、席を立った。もともと、自動操縦中だったのだ。
爆発物処理室(*1)には、多くの乗組員が集まっている。島はそれを掻き分け、古代進のそばまで行った。
「何だそれ?たまごか?」
「というより、繭と言ったほうがよさそうだぞ。」
島の問いに答えたのは、真田志郎だった。
それは、クリーム色をしたややいびつな球体で、大きさはアナライザーの頭くらいだろうか。
「生命ハンノウガ、アリマス」
アナライザーの分析に、乗組員たちは一気にどよめいた。
「まさか、恐竜が生まれるんじゃないだろうな?」
古代が眉をしかめる。
「わからんぞ。もっと物騒なものかも知れん。そう思って、ここに持ってきたんじゃないか。さあ、みんな、散った。散った。」
真田が、好奇心いっぱいの乗組員たちを、追い立てようとした時だった。
「さ・真田さん!」
古代が叫んだ。
突然、球体にひびが入り始めたのだ。
「うわぁ〜!!!」
皆がいっせいにあとずさる中で、それが静かに割れた。
古代が頭を抱えた。真田が顔をそむけた。島は目をつぶった。
「・・・・・・・・・・・・・・?!」
何の物音も、変化も起らない!島は恐る恐る、目を開けた。
「子供じゃないか!!」
皆が口々に、驚きの声をあげる。
それは、膝を抱えるように体を丸めた子供だった。地球人でいえば、4〜5歳くらいだろうか。顔は、俯いていて膝と髪に隠れ見えない。裸である。
「な・なにか着る物を・・!」
古代が後方に向かって叫んだ。
「佐渡先生を呼んでくれ!」
真田も急いで指示を出した。
軽い混乱が起っていた。
そんな中、島が一歩その子供に近づいた時、それが急に顔を上げた。
(うわっ!目があっちまった・・・大きい目だなぁ。吸い込まれそうだ!)
島とその子供は、数秒ほど見詰め合っていた。
「目を覚ましたぞ!」
古代の声で、島は我にかえった。
その子供は、膝を抱えたまま顔だけを上げて・・・ゆるくウェーブのかかった髪は、ごく薄い緑色をしていて耳の下あたりでゆれている。肌の色は透きとおるように白く、その大きな目は宇宙を飲み込んだかのように深く蒼く・・・島をじっと見つめている。
「ほら、ほら、どかんか!患者はどこじゃ?」
佐渡先生が到着したようだ。
「こりゃまた、えらい毛並みの違う子じゃなあ!」
そう言って、とりあえず手袋をはめた手で体に触れようとした瞬間、
「ギギッ!」
子供が跳ね起き、あっという間に島の背後に回ったのだった。
島の右足にしがみついている。
「な・なんじゃい。なんもせんから逃げるな!」
佐渡先生が、島の右側に回った。
「ギ〜!」
子供は慌てて左足に移った。
島の体の周りで、二人が追いかけっこを始めた。
「いいかげんにしてください!!・・・古代、早く服を・・・」
「あ・あぁ」
島は、古代から手渡された小さめのTシャツ(とはいってもその子には大きすぎたが)を子供に手早く着せかけながら、身をかがめた。
Tシャツからちょこんとのぞいた顔を、正面から見つめながら、
「大丈夫だよ。誰も君をいじめたりしないよ。」
と、優しく言い聞かせるのだった。

「おい、古代」
真田は、古代を肘で突付いて言った。
「島のやつ、えらく手慣れているじゃあないか。」
「弟がいますからね。よく、世話をしてたんじゃないですか。」
「なるほど!」

なだめるように島が言う。
「なっ!少しだけ佐渡先生に診察してもらお・・うわぁ!!」
「ギィ〜!」
突然、子供が島に抱きつき、島はそのまま後ろに倒れ込んでしまった。
「ギィー、ギィー」
それは、明らかに喜んでいるように見えた。

「真田さん、なんか犬にじゃれつかれているように見えるんですけど・・・」


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