主な登場人物悪友とわし。クラスで一番のスケベ「歩く生殖器」とあだなされる利根君。彼はキャラクターの割に字が達筆なので、清書及び題字担当。特技は無いが、大金持ちのおぼっちゃん高橋。会計を担当。さらに、ブラスバンド部の山田君少し大人の広岡君、 ブターシャが・・・いた。

 研究会結成から、約二ヶ月が経過していた。時に西暦1978年11月下旬。各自の気持ちがバラバラになっていた。悪友は、「これは落書きや」と山田君のメカを酷評したとき、集団としての寿命がきたかな、と思えた。山田君が「もう、やめてやる!!」と叫び、自分の描いたイラストをビリビリと破いて悪友に向けて投げ捨てたのである!!わしは、放課後の教室で、その光景をみて、「これは・・・」と狼狽した。 

 山田君は結局、戻ってこなかった。当然だと、わしは思った。そして、全然、スケールは違うのだが、N氏と松本氏の仲が悪い、という噂もわかるような気がした。悪友、は決して人に悪意をもって言葉をはく男ではない。ただ、思ったことを直截に言い過ぎる男であった。あいつ自身、自分でそれがわかっていながら、制御できないでいる。あいつ自身も苦悩している。わしは、そのこともよくわかっていた。ただ、元々、その力が無い者に、どうこういったところで、意味は無く、感情だけがこじれていくだけであった。研究会は、8人からひとりへって、7人になった。

 わしは、悪友の指導力をある意味で、盲信していたところがあり、それを自省した。そして、わし自身もリーダーシップをとらねば、会そのものがバラバラになると思った。そこで、本の製作については、わしが主導する旨、悪友に申し入れ、了解を得た。「バトンタッチや」とわしはいった。悪友は微笑して「わかった」といった。

 とにかく、ブサイクでも完成に漕ぎ着けることだ、とわしは思った。わし自身のヤマト第3作の原案のように「途中まで」では意味が無い。メカはどうする?という声が渦巻くなか、「もう、それはいらん」と決断した。「描くやつが居らんから、出来へんやろ」といった。ヤマトという作品の魅力の何割かは確実にメカニックだと思うが、それをあっさり捨てた。そして、ブタ―シャに、「その分、キャラのイラストが重要になるから、がんばれ」と発破をかけた。島が20年後も容貌が変わらない点については目をつぶることにした。キャラを描けるのも、彼女しかいないのだから。一方で、わし自身は、悪友の激しい修正をあびつつ、小説本体の部分を書き上げていった。放課後は打ち合わせだけで終わるようにしたので、作業は家に帰ってから、行う。「ヤングタウン」や「オールナイトニッポン」を聞きながら、深夜まで、執筆した。そして、第1回分40ページ、原稿用紙80枚を書き上げた。出来た分から、字の上手い利根くんがやはり自宅で、清書していく。

 小説以外の部分もある。まず、表紙については、またまた利根君が、題字を毛筆で書いた。「不滅の第三艦橋」と書いた。その下に入るイラストをブタ―シャが描く・・・はずであった。12月。わしは、ブタ―シャに「表紙のイラストを頼む」と話をしたのだが、彼女からは、「もう、描けない」といわれた。彼女は、放課後の教室でじっと涙を溜めながら、言った。「転校するねん」

 彼女は、父親の仕事の都合で、関東方面に転校することになっていたのだ。しかも、もう、それは二日後に迫っていた。わしが、その話を聞いた日は、木曜日で、彼女が引越しをするのが、その週の土曜日の午後だったのだ(当時、土曜日も学校があったことを補足しておく)。「いろいろな用事もいわれていて、もう、イラストが描けない」と彼女は言った。

 その時点での本の進行状況。小説の清書が40ページ中15ページ。悪友の「さらばの批評」が半分。前に触れた「全国からのお便り」のページが3ページ中1ページ。ブタ―シャのポエムのページは3ページあったが、すでに完成していた。なお、ページ数が当初より増えているのは、第1号は二ヶ月分の会費を充てて、ページ数を多くしようという方針に基づいてのことであった。で、結局、何がいいたいかというと、その時点での完成度は、半分くらいということだ。あと一週間は時間を要すると思われた。

 放課後の教室で、ブタ―シャをのぞくスタッフは遂にイラストをかける人間がいなくなるという事実を前に意気消沈していた。期末試験が近づいていたこともあり、「もうやめよう」と高橋君が言う。彼自身は「全国からのお便り」しか担当していなかったので、参加意識が乏しい。「無理やったんや、本なんか」といった。わしは、なんだかんだで、ブタ―シャが集団の意欲を代表していたことを痛感した。今度こそ、駄目かもしれない、とわしは思った。(つづく)

 

 相変わらず、ギャグが無い。ごめんね。もちょっとでおわるから。 

BGM:CROSSING:(C)98 Blue Noise Music


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