主な登場人物悪友とわし。クラスで一番のスケベ「歩く生殖器」とあだなされる利根君。彼はキャラクターの割に字が達筆なので、清書及び題字担当。特技は無いが、大金持ちのおぼっちゃん高橋。会計を担当。さらに、ブラスバンド部の山田君少し大人の広岡君、 ブターシャが・・・いた。

 12月。その時点での本の完成度は、半分くらい。あと一週間は時間を要すると思われた。 ブタ―シャの転校まで、あと46時間だった。とにかく、本としての体裁を整える必要がある。わしは、次々と指示を下した。まず、「ヤマト3」については、大幅に削減し、当初の半分の分量にした。これでは、ヤマト第一話でいうところの、冥王星海戦の冒頭くらいしか話がすすまないので、読み物としては、まったく面白くないのだが、贅沢はいってられなかった。利根君は「それやったら、あと3ページや!」と勇躍、机に向かった。会計の高橋君は、山田が抜けたあとの「全国からのお便り」のコーナーを悪友と一緒に執筆した。そして、わしは、やはり、悪友にはさすがに描かせられないと、表紙のイラスト製作にとりかかった。画才はない。既存のヤマトのムックの上にトレーシングペーパーを貼り、馴れない手つきで書き写す。それは、土方艦長に向かって「ワープしたいのですが」と伺う古代である。学校での作業は、夕方5時くらいまで。その後は悪友の家に場所を移そうとしたが、「テスト勉強しなさい!」と悪友の母親に言われて、その場で解散する。ただ、庭先で、悪友は「原稿は、長田にわたせ!あとはなんとかなる!」といった。

 中学生は、当たり前だが、学校に行く。翌日、わしは、ムックのイラストまる写しの古代のイラストを手に、学校に行った。その日は、期末試験だったが、当然、そんなことは頭に無く、皆が原稿をわしにくれるかどうか、だけが重要だった。ブタ―シャも来ていた。テストだけは受けて、転校ということなのだろうか。ただ、目を合わすことは無かった。広岡君が、ヤマトの論評文を、高橋が「全国からのお便り」を持ってきた。利根君の「ヤマト3」も来た。悪友が少し遅れてきて、原稿を渡せ、わしにいってきた。わしは、原稿を渡した。悪友はいった。「あとは任せや」・・・悪友は、授業を抜け出して、コピーに行くつもりだと、わしにはわかった。わしは、いった。「俺もいくで」

 悪友は答えた。「全員で行けば、目立つ。怒られるんは、わし、ひとりでええ」

 わしは、じっと、悪友の目をみた。曇りが無い。悪友は、黙ってうなづくと、教室をひとり出ていった。そして、期末テストが始まった。全然勉強してないので、できるわけが無い。一時間目の科目が終わりかけた頃、先生がきて、「ちょっと後できなさい」といわれた・・・悪友の失踪がバレタらしい。ブタ―シャとそのとき、はじめて目が合った。あいつなりに心配はしているのだ。

 職員室で、わしは、先生に詰問された。「お前ならしっとるやろう」といわれた。だが、わしは黙ったままだった。悪友は、普段から悪事を重ねていたから全然先生に信用が無く、その友人のわしも同類と思われていた。先生は・・・まだ、若い教師だったが、やがて、憤り、わしに体罰を加えた。「テストから逃げ出すのがあいつのためになると思ってとるんか!」といった。わしは、口に出してはいわなかったが、「あいつはにげてるんやない、戦ってるんや!」と心の中で言い返した。だが、この先公には、いってもわからないだろう、と思った。

 職員室から出てくると、ブタ―シャが居た。「もうええんよ」と彼女はいった。泣きそうな顔だった。わしは、「うるさい!」といって、その場を立ち去った。角材で殴られた背中がズキズキ云っていた。

 教室へ帰る。二時限目。また、テストが始まった。わしは、答案に向かうが、悪友のことが気になって、仕方が無い。なにもかけない・・・。そのときだ・・・後の奴から、メモが回ってきたのは。メモには、「金が無い。かまきり公園で待つ!」とだけ書いてあった(つづく。次回、いよいよ、完結!)

 

BGM:Beautiful Lost:(C)98 Moto


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