翌日―そうかね部長は、「そうかね〜、昨日そんなことがあったのかね〜」とおっしゃった。彼が連れていこうとした店は、一本違う筋にあり、泥酔していて、行き先を間違えたのだろう、と彼はコメントした。今さら、驚かない。「のぶこ」が彼のなんなのかは、相変わらず謎のままだ。謎でいい。
ウインダムとふぐみが付き合い出したと聞かされたのは、数日後だった。それから、さらに数日後・・・辞令が下りて、わしの異動が決まった日・・・わしは、記念にヤマトのキーホルダーをウインダムに渡してやった。
「ええんですか」
「ああ、これまで世話になったから、その記念や。あの晩の思い出にしてくれ」
わしは、笑いながら、ウインダムにそれを渡した。
ウインダムは、顔をキーホルダーに近づけて「なんか、すっぱい匂いがしますね。初恋の匂いかなあ」とつぶやいた。
わしは・・・それが、洗っても洗っても取れなかったアレの匂いだとは言わずに、微笑しつつ、「お世話になりました」と一礼して、職場を去った。
でも、初恋・・・あるいは恋の匂いなど、そんなものかもしれない。
−完−
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