27.もがみ艦橋
こじんまりとしたブリッジ。
計器類が無理矢理詰め込まれている印象。
艦長席に初老の男が座っている。
オペレーター「(前方の席で、計器をみながら欠伸)今日は観光ツアーの客まで乗せてるそうですよ。例の物体目当てらしくって」
艦長「輸送船団も商売の時代なのさ」
オペレーター「商売なんですかねえ。どっか違うような気がしますけど」
艦長「間違ってるのは、くそ真面目にあいつらを連れて飛んでるわしらの方さ」
ブリッジ内に乾いた笑いが広がる。
28.宇宙空間
例の小惑星にめり込んだ謎の物体の側を通り過ぎる艦隊。
輸送船の舷側部分にある展望室に人が群がる様子が見える。
29.輸送船「ロンワン」・展望室
わっと人が群がって窓の外の物体を見ている。
楽しそうである。
ガイド(若い女性、コスチュームに身を包んでいる)が、マイクを手に説明している。
ガイド「これが木星観光のトレンドスポット、『宇宙の目』です。昨年、太陽系外からこの小惑星帯に突進、激突した謎の物体で、製造者は不明です。あるいはエイリアンが創ったものかもしれないという説もあり、科学者たちの間で、話題になっています」
30.宇宙空間
前方にガニメデが見えてくる。
艦隊、ガニメデに近づいていく。
31.もがみ・艦橋
艦長、あくびする。
32.ガニメデ基地ドッグ内
入港しているもがみ。
33.もがみ艦長室
12畳くらいのスペースに執務机がある。
飾り気はない。
私物をダンボールに詰め込んでいる艦長。
ノックの音がする。
ドアフォンから男の声「沖田です」
艦長「入れ」
自動ドアが開いて、30代くらいの青年が入ってくる。
やや、背は低いものの、意志の強そうな目をしている青年。
彼こそが本編の主人公、沖田十三である・・・。
沖田「失礼します」
沖田、艦長の様子見て「(苦笑しつつ)あれだけ暇だったのに、まだ、私物の整理をされてなかったのですね」
艦長「うるさい。口のへらん男だ。まあ、そこに座れ」
どうやら、気さくな関係らしい。
沖田、艦長執務机の前にあるテーブルに付属しているイスに腰掛ける。
沖田「艦長、送別会の時間と場所をお知らせに参りました」
艦長「(苦笑して)副長自らか。世も末だな」
沖田「(微笑しつつ)宴会の幹事は当艦の最重要事務分掌であります」
艦長「(笑みつつ)ばか者」
沖田「艦長のご希望だったタイタン基地の飲み屋街ではできませんでしたが」
艦長「日本人が開発したのがたまたまガニメデで、そこに日本人が多く勤務する。そして、日本人相手の飲み屋街ができる・・・これ極めて自然、宇宙の法則、だよ。それより・・・なぜ、科学調査室勤務の道を蹴ってこの艦の艦長の辞令を受けた?退屈だぞ」
沖田「それでも艦(ふね)ですから。学問か艦(ふね)か、悩みはしましたが」
艦長「そうか・・・」
沖田、頭をかく。
PICTURE BY STATION T.T.B.