先日、JSAの話を友人としていて、スイングガールズの上野樹理も出ている韓国関連の映画があるよと教えてもらったのがこの映画です。
これは純然たる邦画ですからいわゆる韓流ともいえませんね。
概要にありますように、下関の女子高生が釜山の男子生徒と陸上競技大会をきっかけに知り合い、再会を約束し、切ない恋を体験するという映画なのですが、結論から言うと非常に感動しました。手放しでお勧めできます。
まず、冒頭のしみじみとしたピアノ主体の音楽が素晴らしい。タイトル観た瞬間から、まだ映画の内容に入る前から涙が出そうになりました。このサントラはもはや反則といっていいくらい素晴らしい。
また、音楽がらみでコメントするとこの映画の時代設定が1977年なのですが、当時のヒット曲「カルメン77」「あんたのバラード」等々、我々リアルタイムヤマトファンにとって忘れられない曲が流れてきます。これだけでもかなり懐かしく楽しめました。(音楽だけでなく1977年の再現という意味では本当に頑張っていたと思います。最近の和製戦争映画も見習って欲しい…)。
そして、肝心のドラマ部分ですが、第一に演技陣について。
主役の4人の女子高生役の子らが本当に役になりきって演じており、観ていて不自然な部分を全く感じませんでした。方言関係は下関の人間じゃないので分りませんが…少なくとも1977年の女子高生を見事に演じきってたと思います。陸上競技の選手という設定もあるのですが、オーディション段階から「まず走れる子」という基準があったそうです。そして、本格的なトレーニングまでしている。映画本編にそれは充分に活かされてました。それと、ファッションについてですが、メイキング観て「あの頃は茶髪の子なんていなかったんだなあ」としみじみしてしまいました。
冒頭から登場する主役4人の今の姿を演じる中年女性俳優陣もお見事。映画を観終わると「あの4人組がああいうおばちゃんになっていく」ということが「生理的に」納得できるんです。これはキャスティングも含めて神業ですね。特に高木澪は抑えた良い芝居見せてくれます。
第二に、シナリオとか演出について。
軸としてあるのは、主役の女子高生と韓国の男子高校生の切ない恋なのですが、背景に韓国と日本の厳しい関係とか、朝鮮半島自体が内包する南北の問題とかが出てきます。特に、日本と韓国の人々が互いを憎み、軽蔑していた時代背景というのは、なかなか描くのは勇気も要ることと思いますが、これをきっちりと逃げずに行ったこと。凄いと思います。韓国人のことを嫌う人の代表格が主人公の父親(山本譲二)なのですが、この人はそれ以外ではいい人なんですよね。こういういい人、普通の人の中に「差別」「憎しみ」という感情があったことを描く視点。この父親は監督のお父上をモデルにされてるそうですが、拍手を送りたいと思います。
さらに、もうひとつの背景というか、むしろテーマ的にはこちらの方かなと思ったりもするのですが、主人公とその仲間の女子高生たちとの友情物語。これがねえ、すごくいいんですよ。セリフに頼らずに微妙な表情でさまざまな局面を演じきる4人の若い娘さんたちもいい。私、男ですが、ボロボロ泣きました。
第三にロケーションが素晴らしい。下関と釜山という二つの街でドラマが展開しますが、それぞれの街のいい部分を押し付けがましくなく、すーっと心に染み入るように見せてくれます。個人的に釜山は訪れたことありますが、チャガルチ市場では魚の刺身がとても美味です。映画と関係ないけどお勧めしておきます(笑)。
最後に総評ですが、本当に爽やかな恋愛映画になってます。メールも携帯も無い、文通で心を通わせた…あの過去の初恋に思いを馳せるも良し、韓国と日本のことに思いを馳せるも良し。幾重にも人の思いが重なった素晴らしい映画でした。褒めすぎといわれるかもしれないけれどニューシネマパラダイスをはじめてみた時に近い感動を味わいました。
本当にお勧めします!