「タイムスリップもの」の超有名作ですが、ジャンルのことは忘れていいと思います。というのは、それから連想される歴史改変の可能性、あるいはその可否といったミステリ的な展開は、本作にはまるで存在せず、タイムスリップはただ舞台づくりのための道具に過ぎないからです。
主題は根無し草となってしまった状況で、各人各様の形を取って現れる「もがき」そのものです。小理屈が全くない筋書きには、一種の”潔さ”を感じずにいられません。
戦車はなんと74式でさえなく61式、爆発等の効果は貧弱、高々と掲げた首級はマネキンらしさばっちりと、突っ込みどころには事欠きません。しかしそれ以上に、役者さんの演技の熱さ(と、逃れられない状況が醸し出す空しさ)が、多くを語っています。
冷静さを保ちながらも戦いの狂気に目覚めていく者、血に酔いつつ酔い切れない者、虚無感から悪行三昧に耽る者、残してきた恋人への未練を捨てられない者、祖先の時代に骨を埋めることを選んだ者… 皆それぞれに少しずつ、共感できる面を持っていて「自分ならどうするか?」と、ちょっと考えさせられるのではないでしょうか。
それこそが「客をお話に引き込む」ということであり、娯楽の真髄ではないかとも思うのです。
そんなわけで、ラストシーンの後で「…で、結局、歴史の流れはどうなったんスか」と思われるかもしれませんが、これはそういう映画ではありません。
歴史なんて、おのれひとり生き延びるのに必死なだけの個人に問えるわけはないのですから。
最後にひとこと。長髪にメガネの隊員に、ものすごく時代を感じるのは私だけでしょうか(笑)