原作は、ライトノベルである。
少し前に「映画になります」と友人に教えられて、原作を読んでいたので、ストーリーの結末は知っていた。
だから、「あ」と驚く展開は小説を読んだときに経験していて映画では、そういう個所も落ち着いてみていた。
しかし、実際に目にすると字で読んでいた以上の大きな感動を得られたシーンもあった。
特に、ファナという皇女、シャルルという青年パイロットの心のふれあいは表情の描写がとてもうまく、脚本も人間の血の通った言葉をちりばめていて好感をいだいた。
ちなみに、映画では割愛されたが原作では、ファナがトイレに困り、シャルルが後ろを向いている間に済ませるという描写がある。
声優は批判されているようだ。確かにうまいかうまくないかといとうまくないと思う。しかし、この映画の場合、うまくない方が伝わるものがある。
とつとつとした言葉の出だし、不器用だから伝わる心は確かにある。
私は、良いキャスティングだったと思う。
メカニックの描写は、この映画のキモといっていい。主役機サンタクルス。これそのものは、普通の飛行機である。
しかし、戦闘シーンの描写になるとさまざまな細かい描写が重なり迫力のある映像となる。
動きの表現が素晴らしく、動いた時に人間がどのように重力を受け、影響されるかということもリアルに描写している。
そして、ヤマトファンとしてもっとも狂喜したのは、空中戦闘艦の戦闘シーンである。
この世界では空中をプロペラやエンジンで移動する空中戦闘艦が艦隊を組んで戦闘する。
これが、戦艦長門や三笠など「大和」以前の日本海軍のテーストを感じさせるメカニックのかっこよさがある。
かといって古いだけにとどまらず、追尾ミサイルの描写など空中ならではの面白さもあり、十分満足できた。
映画として、大作とは言い難い。キャラが突出した個性を持っているとも言い難い。しかし、一本観終えた後、自分も恋人と別れたような切なさを感じた。
人と人の出会いと別れ、これが流れであるとしたら、その流れに対する人の無力さも感じるラストである。それは叶わない初恋の追体験ともいえる。
映画館を出る時に少し優しい気持ちになった。