寮監に怒鳴られ、既に大方が食事を済ませた食堂に彼はポツリと腰を下ろした。自由時間の賑やかなざわめきが遠くに聞こえ、冷めた食事は味がしなかった。


 「よお、ヤブ。元気ないな。」肩を叩いたのは大田だった。
 「ああ・・・。」
 「なんだい、相変わらずボンヤリしてるな。お前、卒業制作ちゃんとやってんの?」
 「ああ・・、それは、まだ・・。」
 「しっかりしろよ。学校の機材も部材も好きなだけ使えるんだぜ。皆があっと驚くようなものを作ってくれよ。腹踊りだけじゃないってところをさ。」
 大田の声は頭の後ろを通り過ぎていった。

 −大田はいい奴だ。飛行科の山本は、太ったら俺に似ていると言われてちょっと嫌な顔をしたけど、まあ悪い奴じゃない。古代や南部はちょっとテンション高すぎて苦手だケド・・・。でも、みんな俺の親友ってわけじゃない。卒業制作?機材?部材?今、俺が欲しいのはトモダチだ。自分だけの大事な友達。

 その時、頭の中でカチリと何かが音を立てた。その日から、彼は寝食を忘れて卒業制作に没頭した。


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