薄暗い自室で、薮はロボットに話していた。
「なあ、そういう訳で全ての記憶を消去しなければならなくなったんだ。」
「ソウデスカ・・・。サビシイケレドシカタアリマセンネ。」
「本当は忘れて欲しくないんだよ。」
「・・・ワスレマセンヨ。キット、ドコカデ、キット・・・。」
ロボットはもう、黒く色の変った薔薇の花を薮に手渡した。
−リセットが実行された。−
明滅を止めたロボットを前に薮は泣いた。
時折、回路の中を迷走電流が駆け巡り頭の中で小さな声が聞こえる。
「ダイジナダイジナ、ボクノトモダチ・・・」
アナライザー、2199年製万能ロボット。製作者不明。