そうこうしてるうちに、いきなりイントロが流れ出して、ふぐえが唄い始める。

 「時の流れに身をまかせ」だ。

 練習したと彼女は言っていたが、うーむ。

 ま、カラオケとはそんなもんだろう。

 わしは、大人らしい受け止め方をしながら、トイレに立とうとする。

 さっきから、おしっこがしたかったのだ。トイレの場所をとなりに座る部長に聞いたが「いやあ、忘れたよぉ」と予想通りの回答であった(‐‐)。

 仕方ない、ユキに尋ねよう。

 「お手洗いはどこですか?」

 と、わし。

 「え?」

 まわりの音楽のせいか、ユキは聞こえないらしい(汗)。

 「お手洗いですよ」

 大きな声で繰り返す。

 ユキは、耳を手に当てて、「え?」と繰り返す。

 わしは、ちょっといらいらしながら、もう一度、大声で繰り返した。

 「おしっこしたいんですけど」