そう、それは、まごうことなく、あの曲だった。「宇宙戦艦ヤマト」だ。

 「きゃあ、ヤマト」とウインダムと話し込んでいたふぐみが振りかえる。

 ふぐ子がわしに目配せする。しかし、ここで、のこのこ出て行って唄えば、ふぐ子の罠にハマルのをわしはお見通しだった。ふぐ子は、わしにこの唄を唄わせることで、「やっぱり長田課長はヤマトファン」とカミングアウトさせ、ふぐみに対する好感度ダウン作戦に転じようとしているのだ。もっとも、わしのズボンの塗れ具合を知れば、そうするまでもないことだが(汗)

 わしは、唄わなかった。

 すると、「しゃあないなあ、僕が唄いますわ」とウインダムがマイクをとる。

 「きゃあ」と声援の声をあげるふぐみ。

 いつのまにか、となリに来て「次、『銀座の恋の物語』唄いましょうね、課長」と言い寄ってくるべムラ−ゼ(汗)。

 ウインダムが、唄い始める。

 これが、また・・・下手だった。下手だけならいい。歌い方が不真面目だった。

 「ふちゅうしぇんかん〜ひゃああみゃあああとおおおお」

 せめて、引用がJASRACに抵触する程度に上手ければいいのだが・・・。

 わしは、ウインダムの唄を聞きながら、「これでいいのか!?」と自問を始めていた。

 今、目の前で、わしの愛するヤマトが冒涜されている。わしは、それを傍観している。しかも、それは地球を守るためではない。自分の小さな社会的地位を守るためだ。人として、男として、それでいいのか、かめきち!!

 わしは、じっと拳を握り締めた。

 そして・・・ウインダムが1番を唄い終えたそのとき、すっくと立ち上がって、叫んだ!!

 「もういい!!わしが唄う!!貸せっ!!!」