人ごみの雑踏を分けて歩くのも結構大変である。
平日だというのに、夕暮れ時になるとどこから人が湧いてくるのか、まだ真新しいショッピング通りを老若を問わず、人々が行き交う。
比較的、若いカップルの目立つのは、この先の最新鋭のデパートメントストアがお目当てなのだろう。恋人同士で、ショッピングを楽しんだ後、この界隈でディナーと洒落込むのか。いずれにせよ、自分にはあまり関係がない。
「島君…」
ふとそう聞いた様な気がして、ちらと振り返るが、見知った者はいない。
そのまま歩き続けるとまた、今度ははっきりと至近距離で「島君!」と呼ぶ声。
振り向くより先に、声の主が後ろから真横に飛び出し、自分の腕を叩く。
「ユキ!」
声の主は久々に見る森 ユキである。
「少し後ろから、ちらちら見えてたのよ! 似た人がいるなぁって…
でもすごい人なんでなかなか確かめられなくて。」
「今日はどうしたんだい、ひとり?」
「進さん、週明けまでまた調査に飛んでるの。だから週末未亡人って訳なのよ…」
人の流れに促され、歩きながら話すしかない。
「あぁ、確かそうだったよな…。それは寂しいですね。若奥様!?」
からかうように言うと
「慣れてますとも、置いてけぼりには。」と茶目っ気たっぷりである。


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