『変わらないな、この娘は…。』
島 大介は思った。
ユキは出会った頃のままだ。いや、むしろ無二の友、古代 進の妻になってから、いっそうその輝きを増したようである。手の届かぬ所へ行っても尚、こんな風に話すとつい傾倒してしまう自分に気づく。
自分の女々しさに嫌気しながらも、心の奥底ではひそかにときめいてしまう。
だからどうこうという気は天地神明に誓ってないのだが−。
無論、想い人が、友人と晴れてゴールインした事を、友人が無二の宝を獲得した事を心より祝福している。他の誰より似合いのカップルだと思えるのである。
惨めな感情も否定は出来ないが、それよりも増して二人には幸せであって欲しい。
「いい奴だよな…俺は」と自らを賞賛することも出来るのだから−。

「ねぇ、島君、これから何かある?」
「いや、残念なことに何もないさ。」
「じゃぁ、可哀想な未亡人に少し付き合ってよ。」
「いいけど、どこに行くの?」
「もうすぐ進さんの誕生日なのよ。何かプレゼントを選びたいんだけど、一緒に選んでもらえないかしら?」
少しすまなそうに言う。
「お〜っ、いいねぇ、新婚さんは!それで、寂しい独り者に甘〜いお手伝いをさせようって訳?」
瞳を覗き込むようにからかうと、「駄目?」と悪びれもせず聞いてくる。

二人はそのまま会話を続けながら、デパートメントストアの入口をくぐった。
斬新且つ、きらびやかな装飾の施された店内は、天井も高く、照明が華やかに演出されており、豪奢な雰囲気をかもし出している。
時間帯の為か、若い女性客中心にアベックや、仕事帰りの男性などで大盛況といったところである。
こうして並んで歩いていると二人ともそう見えなくもない。
もちろんお互い考えも及ばないが。
「なにあげるの?」
島が尋ねると、
「うん、サマーセーターなんてどう思う?」
「いいんじゃない?あいつはあれでハンサムな部類に入ると思うけど、なにせ無頓着な奴だからな。ユキのセンスで磨いてやれば光るんじゃない?」
「そう、それでスマートな島君にお見立てを手伝ってもらえればって思ったの。ごめんね。」
笑いながら謝る。


next